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東証1部上場「内部昇格」7割超える 基準の緩さ映す

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東京証券取引所市場第1部の企業数が、2部やマザーズ経由で上場する「内部昇格」で押し上げられていることが分かった。1部企業の増加ペースが高まった2011年以降では内部昇格が7割超にのぼる。2部・マザーズ経由だと上場基準が大幅に緩くなるためで、内部昇格企業は時価総額や売買代金で見劣りする。国際競争力の面で日本市場の問題となっており、東証は3月中に改善案をまとめる見通しだ。(増田咲紀、データ分析・村上徒紀郎)

東証1部は企業数の肥大化が続くうえ、「日本最高の市場」にしては小粒な企業も目立ち、投資マネーが日本株を敬遠する要因になっているとの指摘もある。実際、「1部企業の時価総額の中央値はニューヨーク市場の約4分の1、ロンドン市場の半分以下にとどまる」(みずほ証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジスト)。

実態を確認するために、東証が取引を再開した1949年以降の1部銘柄の動きを日本経済新聞が調べた。東証1部の企業数は49年からの約70年で5倍超に増え、2100を超える。上位市場としては国際的にも膨張が目立ち、例えばロンドン証券取引所は「プレミアム」を約500社に絞り込んでいる。

1部の企業数は世界的な株高の影響もあって、11~18年に約460社増と急拡大した。新規上場の内訳をみると、未公開企業などによる直接上場は14%にとどまった一方、2部経由が51%、マザーズ経由が21%と多く、内部昇格全体では7割超にのぼった。

内部昇格の方が1部上場のハードルが低いためだ。直接上場とジャスダック経由の場合、250億円の時価総額(上場時の見込み額)が必要。一方、2部・マザーズ経由だと40億円とハードルは大幅に下がる。2部・マザーズへの上場に必要な時価総額は10億~20億円ともっと小さくてすむ。

1部上場の基準がばらつく背景には、統合前の東証と大阪証券取引所(現大阪取引所)が上場予備軍のベンチャー企業を奪い合っていたという歴史的な経緯がある。12年に現在のルールになるまで、1部に直接、もしくは大証傘下だったジャスダックから上場するには500億円の時価総額が必要で、ハードルはもっと高かった。

そうしたなか、東証は02年に「2部・マザーズ経由なら40億円」という内部昇格の基準を新設。知名度が高く、社員の採用などでも有利になる1部をめざすうえで、2部・マザーズからの内部昇格ルートを選ぶ企業が増えた。

2部・マザーズ上場から1部昇格までにかかった期間を東証が13~17年を対象に調べたところ、「1年以上、2年未満」が6割と過半を占めた。企業の質や体力を抜本的に高めるには限られた期間だといえる。モバイル端末向けゲームの開発を主力とするエイチームのように、マザーズ上場後約7カ月で1部に移った例もある。

内部昇格した企業は時価総額や売買代金で見劣りする。直接上場した企業の平均時価総額(18年末値)は3492億円。これに対して内部昇格は408億円と約1割の規模しかない。売買代金(18年合計)でみても、直接上場は2378億円ある一方、内部昇格は847億円と4割弱の水準にとどまる。

2部やマザーズには「ステップアップ市場」としての役割があり、企業が1部に移っていくのはおかしなことではない。ただ、上場基準の緩さによって、「小粒企業の増加」という問題が生じてしまっている。

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