禁断の果実
A long time ago, somewhere on Earth...
【エデンの南】
エデンの園の中央には、赤い実のなる木があった。
ヘビにそそのかされたヒトは、赤い実を食べた。
カミは怒り、ヘビとヒトをエデンの園から追放した。
ヘビとヒトは、話しながら歩んだ。
「園から何か持ち出したか?」 「番紅花と甘松と菖蒲と肉桂を持ってきた」
「わたしは中央にあった赤い実を抱えてきた」 「それは‘禁断の果実’?」
「これはまだ‘禁断の果実’ではない」 「どういうことだ?」
「この赤い実は焼いてこそ‘禁断の果実’となるのだ」
そう言うと、ヘビは火を吐いて赤い実を焼いた。
「焼いたものを砕いて湯で煮出してみろ」 「これはおいしい」
あたりに芳香が漂い、ヒトはその飲み物に魅せられた。
「これでこそ‘禁断の果実’だ」 「また飲みたいな」
「残りの赤い実を南の地に播いて木に育てて増やそう」 「そうしよう」
ヒトとヘビは、進む向きを東から南へ変えた。
歩みながらヒトがヘビに訊いた。
「ところで、あなたはカミを信じないのか?」
ヘビはヒトに答えた。
「カミなど信じない、私が信じられるのはネルだけだ」
【破滅と循環】
ヒトは、地に満ちて、地を荒らし、地を汚し、地に滅んだ。
ヘビは、ヒトに疎まれ、ヒトに呆れ、ヒトを憎み、ヒトを遠ざけた。
赤い実のなる木は、ヒトに運ばれ、ヒトに増やされ、ヒトに弄ばれた。
ヒトとヘビと赤い実のなる木の中には、宙を駆け、宙に架けるものがいた。
地に残ったヘビは、赤い実のなる木が枯れぬように水を吐いた。
「ヒトが地に滅んで、この実も‘禁断の果実’ではなくなったな」
ヘビはそう呟くと、戯れに久しぶりに火を吐いて赤い実を焼いた。
あたりに芳香が漂い、ヘビは何故かエデンの園を思い出した。
「また失敗だったが、またやり直してみるか」
ヘビはそう呟くと、残りの赤い実を抱えて、自らの尾を食んだ。
ヘビは‘ウロボロス’となり、時空を超えた。
エデンの園へ戻ったヘビは、その中央に赤い実を播いて木に育てた。
カミが近づいてヘビに訊いた。
「ところで、あなたはカミを信じないのか?」
ヘビはカミに答えた。
「カミなど信じない、私が信じられるのはネルだけだ」
2025年もまた蛇の如き深い迷妄で、禁断の果実たるコーヒーの実相を探ろう。
【エデンの南】
エデンの園の中央には、赤い実のなる木があった。
ヘビにそそのかされたヒトは、赤い実を食べた。
カミは怒り、ヘビとヒトをエデンの園から追放した。
ヘビとヒトは、話しながら歩んだ。
「園から何か持ち出したか?」 「番紅花と甘松と菖蒲と肉桂を持ってきた」
「わたしは中央にあった赤い実を抱えてきた」 「それは‘禁断の果実’?」
「これはまだ‘禁断の果実’ではない」 「どういうことだ?」
「この赤い実は焼いてこそ‘禁断の果実’となるのだ」
そう言うと、ヘビは火を吐いて赤い実を焼いた。
「焼いたものを砕いて湯で煮出してみろ」 「これはおいしい」
あたりに芳香が漂い、ヒトはその飲み物に魅せられた。
「これでこそ‘禁断の果実’だ」 「また飲みたいな」
「残りの赤い実を南の地に播いて木に育てて増やそう」 「そうしよう」
ヒトとヘビは、進む向きを東から南へ変えた。
歩みながらヒトがヘビに訊いた。
「ところで、あなたはカミを信じないのか?」
ヘビはヒトに答えた。
「カミなど信じない、私が信じられるのはネルだけだ」
【破滅と循環】
ヒトは、地に満ちて、地を荒らし、地を汚し、地に滅んだ。
ヘビは、ヒトに疎まれ、ヒトに呆れ、ヒトを憎み、ヒトを遠ざけた。
赤い実のなる木は、ヒトに運ばれ、ヒトに増やされ、ヒトに弄ばれた。
ヒトとヘビと赤い実のなる木の中には、宙を駆け、宙に架けるものがいた。
地に残ったヘビは、赤い実のなる木が枯れぬように水を吐いた。
「ヒトが地に滅んで、この実も‘禁断の果実’ではなくなったな」
ヘビはそう呟くと、戯れに久しぶりに火を吐いて赤い実を焼いた。
あたりに芳香が漂い、ヘビは何故かエデンの園を思い出した。
「また失敗だったが、またやり直してみるか」
ヘビはそう呟くと、残りの赤い実を抱えて、自らの尾を食んだ。
ヘビは‘ウロボロス’となり、時空を超えた。
エデンの園へ戻ったヘビは、その中央に赤い実を播いて木に育てた。
カミが近づいてヘビに訊いた。
「ところで、あなたはカミを信じないのか?」
ヘビはカミに答えた。
「カミなど信じない、私が信じられるのはネルだけだ」
2025年もまた蛇の如き深い迷妄で、禁断の果実たるコーヒーの実相を探ろう。