褐色の白い恋人
‘You're the cream in my coffee’…例えばミュージカル『ホールド・エヴリシング!』(Hold Everything!/1928年)で歌となったり、或いは映画『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』(For Love of the Game/1999年)で台詞となったり…コーヒーにミルクやクリームが合うことは明白である…さてコーヒー屋は、‘You're the cream in my coffee’か?
《コーヒーはあくまでも嗜好品ですから、自分で飲んでうまいと思う飲み方で飲めばよいのです。(略)ただし、ほんとにおいしいコーヒーならば、コーヒーそのものをタンノウするには、やはりミルクの邪魔が入らないブラックで飲むべきじゃないかと思います。少し誇張していえば、お客にミルクを入れられるということは、商売人にとって恥をかいたことになるとさえいえるのです。(略)しかし、ブラックで飲むのが通だと思うのはやはり偏見ですし、まして他人に強いることはおやめなさいと、いいたいのです。》 (関口一郎「ブラックで飲むのが通だというのはナンセンスでありやめて下さい」/『コーヒー読本』 関口一郎:著/いなほ書房:刊 1990年)
コーヒーにミルクを入れて好いのか好くないのか、サッパリわからない…厭味と驕慢に満ちた関口節、老耄したブラックジョーク? これぞ、「ナンセンスでありやめて下さい」だ。日本の自家焙煎コーヒー屋の多くは「ミルクを入れるのを『嫌嫌ながら』容認する」(?)風潮、いつの日かミルクを入れる客ばかりで席を占めて店主らを憤死に追い込んでみたいものだ。さらに、純正のミルクや生クリームではなくて、「クリーミングパウダー」や「コーヒーフレッシュ」と呼ばれる白い液体を要求したならば、何と評するであろうか?
俗称「コーヒーフレッシュ」系のコーヒークリーミング液は、ポーションタイプ(使い切り用小型パッケージ仕様)が開発されて普及が加速したが、その初源は混迷し不明である。メロディアン(旧名:日興乳業)は、《1977年、日本初ポーションタイプコーヒーフレッシュ「メロディアンミニ」発売》、と言う(メロディアンWebサイト)。しかし、めいらくグループ(名古屋製酪ほか)は、《1977年、箱入りポーション「スジャータP」発売》、と言う(スジャータWebサイト)。同じ1977年の前者が6月、後者が3月に発売とする不確かな情報もある。だが、1975年秋季に月刊喫茶店経営別冊として刊行された『たのしい珈琲 No.2』(柴田書店)には、明治乳業が《ベターハーフは日本に初めて登場した、まったく新しいクリーミングリキッドです》、と広告を掲載している。「コーヒーフレッシュ」ポーションタイプの日本初は、メロディアンミニなのかスジャータPなのかベターハーフなのか、サッパリわからない…コーヒーと同様の驕慢に満ちている、「ナンセンスでありやめて下さい」だ。
ネスレ日本は、2012年3月6日よりクリーミングパウダー「ネスレ ブライト」のモニターキャンペーンを総計1万人規模で進めたが、失敗したのか気をよくしたのか、同年9月20日より総計10万人規模に拡大して再び実施し始めた。期間中は「ネスレ ブライト」のWebサイトでスペシャルコンテンツ「ゆげメッセ」を公開し、コーヒーの湯気でくもった窓ガラスに文字やイラストを描いてメッセージを作ることができる。私も早速に試してみた。
1953年に開発されて1961年に発売された森永乳業の「クリープ」、この先行商品の広告「クリープを入れないコーヒーなんて…」に倣い、1969年より発売されたネスレの「ブライト」に相応しいメッセージ「ブライトを入れたコーヒーなんて!」を作った…如何?
「褐色の恋人」スジャータ(テトラパック)が発売された1976年、同年に菓子という別種の‘コーヒーの恋人’ともいえる「白い恋人」が石屋製菓から発売された(もっとも、2007年8月に「白い恋人」賞味期限改竄問題が発覚、コーヒーを裏切ったことは忘れられない)。純正ミルクも生クリームもエバミルクもクリーミングパウダーもコーヒーフレッシュも、いわばコーヒー「褐色」の「白い恋人」、‘You're the cream in my coffee’なのかは謎である。
《コーヒーはあくまでも嗜好品ですから、自分で飲んでうまいと思う飲み方で飲めばよいのです。(略)ただし、ほんとにおいしいコーヒーならば、コーヒーそのものをタンノウするには、やはりミルクの邪魔が入らないブラックで飲むべきじゃないかと思います。少し誇張していえば、お客にミルクを入れられるということは、商売人にとって恥をかいたことになるとさえいえるのです。(略)しかし、ブラックで飲むのが通だと思うのはやはり偏見ですし、まして他人に強いることはおやめなさいと、いいたいのです。》 (関口一郎「ブラックで飲むのが通だというのはナンセンスでありやめて下さい」/『コーヒー読本』 関口一郎:著/いなほ書房:刊 1990年)
コーヒーにミルクを入れて好いのか好くないのか、サッパリわからない…厭味と驕慢に満ちた関口節、老耄したブラックジョーク? これぞ、「ナンセンスでありやめて下さい」だ。日本の自家焙煎コーヒー屋の多くは「ミルクを入れるのを『嫌嫌ながら』容認する」(?)風潮、いつの日かミルクを入れる客ばかりで席を占めて店主らを憤死に追い込んでみたいものだ。さらに、純正のミルクや生クリームではなくて、「クリーミングパウダー」や「コーヒーフレッシュ」と呼ばれる白い液体を要求したならば、何と評するであろうか?
俗称「コーヒーフレッシュ」系のコーヒークリーミング液は、ポーションタイプ(使い切り用小型パッケージ仕様)が開発されて普及が加速したが、その初源は混迷し不明である。メロディアン(旧名:日興乳業)は、《1977年、日本初ポーションタイプコーヒーフレッシュ「メロディアンミニ」発売》、と言う(メロディアンWebサイト)。しかし、めいらくグループ(名古屋製酪ほか)は、《1977年、箱入りポーション「スジャータP」発売》、と言う(スジャータWebサイト)。同じ1977年の前者が6月、後者が3月に発売とする不確かな情報もある。だが、1975年秋季に月刊喫茶店経営別冊として刊行された『たのしい珈琲 No.2』(柴田書店)には、明治乳業が《ベターハーフは日本に初めて登場した、まったく新しいクリーミングリキッドです》、と広告を掲載している。「コーヒーフレッシュ」ポーションタイプの日本初は、メロディアンミニなのかスジャータPなのかベターハーフなのか、サッパリわからない…コーヒーと同様の驕慢に満ちている、「ナンセンスでありやめて下さい」だ。
ネスレ日本は、2012年3月6日よりクリーミングパウダー「ネスレ ブライト」のモニターキャンペーンを総計1万人規模で進めたが、失敗したのか気をよくしたのか、同年9月20日より総計10万人規模に拡大して再び実施し始めた。期間中は「ネスレ ブライト」のWebサイトでスペシャルコンテンツ「ゆげメッセ」を公開し、コーヒーの湯気でくもった窓ガラスに文字やイラストを描いてメッセージを作ることができる。私も早速に試してみた。
1953年に開発されて1961年に発売された森永乳業の「クリープ」、この先行商品の広告「クリープを入れないコーヒーなんて…」に倣い、1969年より発売されたネスレの「ブライト」に相応しいメッセージ「ブライトを入れたコーヒーなんて!」を作った…如何?
「褐色の恋人」スジャータ(テトラパック)が発売された1976年、同年に菓子という別種の‘コーヒーの恋人’ともいえる「白い恋人」が石屋製菓から発売された(もっとも、2007年8月に「白い恋人」賞味期限改竄問題が発覚、コーヒーを裏切ったことは忘れられない)。純正ミルクも生クリームもエバミルクもクリーミングパウダーもコーヒーフレッシュも、いわばコーヒー「褐色」の「白い恋人」、‘You're the cream in my coffee’なのかは謎である。