世界一おいしいコーヒーの淹れ方
世界一おいしいコーヒーを淹れるには、どうすればよいのか? たとえば、2014年の‘World Barista Championship’で優勝した井崎英典氏が著した『ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える 世界一美味しいコーヒーの淹れ方』(ダイヤモンド社:刊)という本を読んで淹れればよいのか? それとも、2016年の‘World Brewers Cup’で優勝した粕谷哲氏が監修した「V60ドリッパー・粕谷モデル」(HARIO)を使って4:6メソッドで淹れればよいのか? ないしは、2019年の‘World Brewers Cup’で優勝した杜嘉宁(ドゥ・ジャーニン)氏が使用している「ORIGAMI(オリガミ)」ドリッパー(光洋陶器)で淹れればよいのか? あるいは、2013年の‘World Coffee Roasting Championship’で優勝した後藤直紀氏が監修したプロファイルを用いて「The Roast(ザ・ロースト)」(パナソニック)で焙煎したコーヒー豆を使って淹れればよいのか? はたまた、近来はレジェンドと称される田口護氏が監修した全自動コーヒーメーカー「CM-D457B」(ツインバード工業)の《世界一おいしい》というキャッチコピーを信じて淹れさせればよいのか? さて、どれが世界一おいしいコーヒーであるのか? その味わいが世界一であると、誰がどのように判定するのだろう?

《本来であれば、コーヒーにはプロが使用する多様な指標が存在しますが、本書ではなるべく多くの人が共通理解を持つ味わいの表現を使用し、より簡易的に味わいを捉えられるように構成しています。自分好みの味わいを知るために参考となる、「味わいの道しるべ」として活用していただければと思います。(略) そして濃度感と酸味と苦味の組み合わせによって顕著となるのが「後口」です。後口もまた味わいの指標として一般的ですので、後口を「キレ」「コク」「スッキリ」「まろやか」と分類しました。なお、どの味わいも適度に併せ持つのが中心の「バランス」です。キレは酸味と濃度の高さ、コクは苦味と濃度の高さ、スッキリは酸味と濃度の低さ、まろやかは苦味と濃度の低さから生じると定義しています。》 (井崎英典 「コーヒーの味はどう表す? バリスタ秘伝の「味わい判定表」がすごい」/Web『ダイヤモンド・オンライン』 2019.12.21)
なるほど、井崎英典氏が掲げたコーヒーの後口についての「味わい判定表」は、SCA(スペシャルティコーヒー協会)によるフレイヴァーホイールなどと比べれば《簡易的に味わいを捉えられるように構成して》いる。だが、表現が詳細であれ簡略であれ、コーヒーの香味に関する表現を規定すること自体が、本当に《自分好みの味わいを知るために参考となる》のだろうか? 《なるべく多くの人が共通理解を持つ味わいの表現を使用》させようとするのは、コーヒーの業界人が‘客’の好みを強いて誘導するためでもある。香味に関する表現の規定は、《「味わいの道しるべ」として活用》できるばかりでなく、その規定された表現の自縛で真なる《自分好みの味わい》の道を見失わせることもある。

さて、井崎英典氏による「味わい判定表」の4つの象限、《後口を「キレ」「コク」「スッキリ」「まろやか」と分類》したもの、これを私は入れ替えてみた。そして、Twitterの投票機能を使って適切さのクエスチョネア(アンケート)を行った。
A:酸味と高濃度でコク、苦味と高濃度でまろやか、
酸味と低濃度でスッキリ、苦味と低濃度でキレ 13.8%
B:酸味と高濃度でコク、苦味と高濃度でまろやか、
酸味と低濃度でキレ、苦味と低濃度でスッキリ 6.9%
C:酸味と高濃度でキレ、苦味と高濃度でコク、
酸味と低濃度でまろやか、苦味と低濃度でスッキリ 6.9%
D酸味と高濃度でキレ、苦味と高濃度でコク、
酸味と低濃度でスッキリ、苦味と低濃度でまろやか 72.4%
回答の総数は58票、このうち7割強が井崎氏が示した分類と同じ「D」を選択した。しかし、同時に残り3割弱の「D」以外を選択した票は、井崎氏とは異なる表現で《自分好みの味わい》を示している。コーヒーの香味に関する表現を規定すること自体が、本当に《自分好みの味わいを知るために参考となる》のだろうか?

ところで、先般に日本放送協会(NHK)は、日本の著名なコーヒー業界人を取り上げたテレビ番組を続けざまに4つ放送した。これらを、私は「テレビ番組味わい判定表」として掲げてみる。取り上げられた人物と番組の構成などによる視聴の‘後口’を、「キレ」「コク」「スッキリ」「まろやか」の軸で分類したのである。
井崎英典 「高校中退 おちこぼれがバリスタ世界一に!」
(「逆転人生」 NHK G/2019年9月23日放送)
丸山健太郎 「秘境へ究極のコーヒーを求めて アメリカ・南米」
(「世界はほしいモノにあふれてる」 NHK G/2019年10月10日放送)
川島良彰 「コーヒーで世界を変える 川島良彰」
(「ザ・ヒューマン」 NHK BS1/2019年12月14日放送)
田口護 「鉱山跡の荒地をコーヒーで緑に~中国・雲南省~」
(「Side by Side」 NHK BS1/2019年12月16日放送)
キレとスッキリで井崎英典氏、キレとまろやかで丸山健太郎氏、コクとスッキリで川島良彰氏、コクとまろやかで田口護氏、これが私の視聴の‘後口’による「テレビ番組味わい判定表」である。さて、どれがおいしいコーヒーであるのか? その味わいがおいしいと、誰がどのように判定するのだろう? NHKの4つの番組を観ても、私にはわからなかった。
世界一おいしいコーヒーを淹れるには、どうすればよいのか? その味わいが世界一であると、誰がどのように判定するのだろう? どうでもよいことだ。「味わいの道しるべ」は、コーヒーを淹れて飲む人それぞれの中にしかないのだから。「コーヒーのおいしさ」には日本一も世界一もない、材と機に応じて淹れるだけでよい、そう識(し)ることが真なる《自分好みの味わい》のコーヒーへの道、その一歩である。

《本来であれば、コーヒーにはプロが使用する多様な指標が存在しますが、本書ではなるべく多くの人が共通理解を持つ味わいの表現を使用し、より簡易的に味わいを捉えられるように構成しています。自分好みの味わいを知るために参考となる、「味わいの道しるべ」として活用していただければと思います。(略) そして濃度感と酸味と苦味の組み合わせによって顕著となるのが「後口」です。後口もまた味わいの指標として一般的ですので、後口を「キレ」「コク」「スッキリ」「まろやか」と分類しました。なお、どの味わいも適度に併せ持つのが中心の「バランス」です。キレは酸味と濃度の高さ、コクは苦味と濃度の高さ、スッキリは酸味と濃度の低さ、まろやかは苦味と濃度の低さから生じると定義しています。》 (井崎英典 「コーヒーの味はどう表す? バリスタ秘伝の「味わい判定表」がすごい」/Web『ダイヤモンド・オンライン』 2019.12.21)
なるほど、井崎英典氏が掲げたコーヒーの後口についての「味わい判定表」は、SCA(スペシャルティコーヒー協会)によるフレイヴァーホイールなどと比べれば《簡易的に味わいを捉えられるように構成して》いる。だが、表現が詳細であれ簡略であれ、コーヒーの香味に関する表現を規定すること自体が、本当に《自分好みの味わいを知るために参考となる》のだろうか? 《なるべく多くの人が共通理解を持つ味わいの表現を使用》させようとするのは、コーヒーの業界人が‘客’の好みを強いて誘導するためでもある。香味に関する表現の規定は、《「味わいの道しるべ」として活用》できるばかりでなく、その規定された表現の自縛で真なる《自分好みの味わい》の道を見失わせることもある。

さて、井崎英典氏による「味わい判定表」の4つの象限、《後口を「キレ」「コク」「スッキリ」「まろやか」と分類》したもの、これを私は入れ替えてみた。そして、Twitterの投票機能を使って適切さのクエスチョネア(アンケート)を行った。
A:酸味と高濃度でコク、苦味と高濃度でまろやか、
酸味と低濃度でスッキリ、苦味と低濃度でキレ 13.8%
B:酸味と高濃度でコク、苦味と高濃度でまろやか、
酸味と低濃度でキレ、苦味と低濃度でスッキリ 6.9%
C:酸味と高濃度でキレ、苦味と高濃度でコク、
酸味と低濃度でまろやか、苦味と低濃度でスッキリ 6.9%
D酸味と高濃度でキレ、苦味と高濃度でコク、
酸味と低濃度でスッキリ、苦味と低濃度でまろやか 72.4%
回答の総数は58票、このうち7割強が井崎氏が示した分類と同じ「D」を選択した。しかし、同時に残り3割弱の「D」以外を選択した票は、井崎氏とは異なる表現で《自分好みの味わい》を示している。コーヒーの香味に関する表現を規定すること自体が、本当に《自分好みの味わいを知るために参考となる》のだろうか?

ところで、先般に日本放送協会(NHK)は、日本の著名なコーヒー業界人を取り上げたテレビ番組を続けざまに4つ放送した。これらを、私は「テレビ番組味わい判定表」として掲げてみる。取り上げられた人物と番組の構成などによる視聴の‘後口’を、「キレ」「コク」「スッキリ」「まろやか」の軸で分類したのである。
井崎英典 「高校中退 おちこぼれがバリスタ世界一に!」
(「逆転人生」 NHK G/2019年9月23日放送)
丸山健太郎 「秘境へ究極のコーヒーを求めて アメリカ・南米」
(「世界はほしいモノにあふれてる」 NHK G/2019年10月10日放送)
川島良彰 「コーヒーで世界を変える 川島良彰」
(「ザ・ヒューマン」 NHK BS1/2019年12月14日放送)
田口護 「鉱山跡の荒地をコーヒーで緑に~中国・雲南省~」
(「Side by Side」 NHK BS1/2019年12月16日放送)
キレとスッキリで井崎英典氏、キレとまろやかで丸山健太郎氏、コクとスッキリで川島良彰氏、コクとまろやかで田口護氏、これが私の視聴の‘後口’による「テレビ番組味わい判定表」である。さて、どれがおいしいコーヒーであるのか? その味わいがおいしいと、誰がどのように判定するのだろう? NHKの4つの番組を観ても、私にはわからなかった。
世界一おいしいコーヒーを淹れるには、どうすればよいのか? その味わいが世界一であると、誰がどのように判定するのだろう? どうでもよいことだ。「味わいの道しるべ」は、コーヒーを淹れて飲む人それぞれの中にしかないのだから。「コーヒーのおいしさ」には日本一も世界一もない、材と機に応じて淹れるだけでよい、そう識(し)ることが真なる《自分好みの味わい》のコーヒーへの道、その一歩である。