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ビルに突き刺さる橋 大阪・淀川で見つけた

水都大阪 橋にも物語

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 淀川に沿ってサイクリングを楽しんでいた時、奇妙な橋を見つけた。7つの緩やかなアーチが淀川をまたぐ大がかりな橋だが、川岸でビルの壁面に"突き刺さっている"のだ。「何のために」。がぜん興味がわいた。かつて浪速八百八橋と呼ばれた大阪には、今も面白い橋が他にもありそうだ。淀川周辺を巡ってみた。

橋が突き刺さったビルをよく見ると、「NTT西日本淀川ビル」の看板が。同社に聞いてみた。

「当社では十三専用橋と呼んでいます。通信回線を収納し、対岸でも小さな建物に直結しているんですよ」。NTTグループの通信設備管理を担うNTTインフラネット(東京)の上原秀幹アーバンデザインセンタ西日本所長がこう話す。

新大阪駅などがある大阪北部と大阪市内の間の通信増加に対応するため、1984年に完成した。川を越えて回線を渡す場合、トンネルを掘ることが多いが、川幅が広く、通信量が膨大なものになる見通しだったことから、専用橋を架けたという。上原さんは「NTTグループには札幌市の豊平川と東京都の隅田川にも専用橋がありますが、十三専用橋が長さ約790メートルで最長です」と誇らしげだ。

◇            ◇

一般の人や車が通行できない「専用橋」のため、地図によっては掲載していない場合もあるという。確かに書店で扱っている都市地図などには載っていないものが目立ち、インターネット上の地図でも、橋の付近を拡大しなければ存在が分からないものがあった。

専用橋の代表格は鉄道橋だが、「淀川には人が渡れる鉄道橋がありますよ」と、橋に関する共著がある大阪歴史博物館学芸員、伊藤純さんが教えてくれた。1929年に開通したJR西日本城東貨物線淀川橋梁(通称=赤川鉄橋)だ。

複線の幅を持つ鉄橋だが、片側のみ貨物列車が単線で運行しており、もう片側には木板を敷いて人が通れるようにしてある。人と線路を隔てるのは木製の欄干のみ。木板の隙間から川面がのぞける簡素な造りで、渡るのはなかなかスリリングだ。人と貨物列車が並んで撮影できるスポットとして、カメラを構える鉄道ファンの姿も多い。

だがこの変わった風景も、数年後には失われてしまいそう。JR西日本によると、すでに一部が「おおさか東線」として旅客営業している城東貨物線は、2019年春までに赤川鉄橋を含む区間でも旅客線とするため工事を進めている。赤川鉄橋は人が通行するスペースに線路を敷き、複線化して鉄道専用橋とし、通行者用の橋を隣に新設する計画が浮上しているという。

◇            ◇

淀川周辺には逆に、一般の人や車が通る橋へ衣替えした鉄道橋がある。国道176号十三大橋の脇にある「浜中津橋」で、実は現存する日本最古の鉄道橋だ。

長さは約33メートルと小ぶり。管理している大阪市建設局によると「大阪―神戸間の鉄道開業にあわせてイギリスから輸入した橋で、1873年製です」。

このイギリス製の橋桁は、淀川の拡幅事業により1900年ごろ鉄道橋としての使命を終え、道路橋として転用・移設された。1935年に再度移設され、現在の場所へ落ち着いたという。同局の担当者は「産業遺産に登録しようという動きもあります」と話す。

淀川は、拡幅工事されたこともあって川幅が500~700メートルと広く、大都市を流れ下ることから「橋の個性も際立っている」(大阪歴史博物館の伊藤さん)という。たもとに歴史的由来を記す碑がある橋も多く、自転車道も整備されている。橋巡りにはうってつけだ。いざ淀川へ。

(大阪社会部 船越純一)

[日本経済新聞大阪夕刊いまドキ関西2012年7月25日付]

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