[社説]米新政権も中国と対話続けよ
バイデン米大統領と中国の習近平国家主席が訪問先のペルーで会談し、対話の継続で一致した。来年1月に退任するバイデン氏が習氏と会うのはこれが最後となる。
米国でトランプ次期政権が発足すれば、米中の対立が再び深刻になる可能性もある。両大国は世界を安定に導く大きな責任を負っている。偶発的な衝突を回避し、その重責を果たすためトランプ政権でも両国は緊密な意思疎通をはかるべきだ。
習氏は会談で「米新政権と協力する用意がある」と対話の維持に意欲を示した。バイデン氏も「こうした対話で誤算を防ぎ、両国の競争が衝突に転じないようにするのが私たちの責任だ」と応じた。
両首脳は核使用の判断を人工知能(AI)に委ねないことで合意した。実効性は今後の推移を注視する必要がある。それでも、AI研究で先行する核大国である両国が、AIの軍事利用に一定の歯止めをかけようとする取り組みは一歩前進といえる。
もっとも、バイデン政権の4年弱で米中関係にこうした前向きな動きはほとんどみられなかった。バイデン氏は経済や軍事で中国に対抗しつつ、気候変動や公衆衛生といった分野では協調を探った。
残念ながら、これらの協力は実を結んでいない。それどころか、台湾を巡る対立で意思疎通が途絶えた時期すらあった。
主な原因が中国にあるのは明らかだ。バイデン氏は台湾への威圧をやめるよう重ねて求めたが、習氏は中国による台湾の平和統一を支持すべきだと反論した。中国は地域の安定を損なう振る舞いをただちに改める必要がある。
トランプ次期大統領は関税の大幅な引き上げを含め、中国に強硬な姿勢を示している。国際社会は米中が対立一辺倒に陥らず、安定した関係を築くよう望んでいる。両国にはその点を踏まえた行動を強く求めたい。対中外交では日米が足並みをそろえるのが肝要だ。日本が強固な日米同盟の維持に努めるべきなのは言うまでもない。