課税回避防止の枠組み、新興国も採用 G20首脳会議で大筋一致
【サンクトペテルブルク=上杉素直】6日閉幕した20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)は先進国主導で検討が進んできた課税回避防止の枠組みを新興国も採用することで大筋一致した。2008年のリーマン・ショックの教訓で始まった金融規制の論議は、銀行を介さない取引「影の銀行(シャドーバンキング)」への監視で連携する方針を確認した。
多国籍企業の課税回避防止に向けた取り組みは、主要8カ国(G8)が6月の首脳会議で合意。先進34カ国が加盟する経済協力開発機構(OECD)が国際課税の統一ルールを作っている。
統一ルールを機能させるには、OECDに加盟していないG20メンバーのうち経済規模が大きい中国やインドの参加が不可欠。首脳会議が6日採択した共同声明は「財政や国民の信頼を損ねる課税回避の問題を解消する計画を承認する」とし、G20として結束して取り組む姿勢を示した。
金融規制では、中国経済のリスクにも浮上している「影の銀行」への対応策が論点に浮上。麻生太郎財務相が討議で「成長資金の円滑な供給に資するものまで規制するのではなく、ヘッジファンドなど金融システムへのリスクとなる場合、G20で協調して適切な対応をとる」との考えを表明。共同声明は監視や規制を強化する動きを支持するとうたった。
今回の会議を期限とした財政再建の取り組みについて、共同声明は「すべての先進国は信頼に足る意欲的な中期的な財政戦略を策定した」と強調した。ただ、議長国ロシアが当初目指した財政再建の共通目標の設定は見送り。日本の計画は消費税率引き上げの判断を保留した内容だった。
共同声明は「若年層で著しい高失業はG20にとって最優先の課題だ」と記し、雇用対策の強化を訴えた。欧州債務危機のピークには財政悪化が経済に与える悪影響が強く意識されていたが、成長促進と雇用問題に関心の軸足が移っている。