不法移民に市民権付与、技術者受け入れ拡大 米が制度改革案
【ワシントン=芦塚智子】オバマ米大統領は29日、ネバダ州ラスベガスで演説し、2期目の優先課題に掲げる移民制度の包括的な改革案を発表した。米国内に約1100万人いる不法移民に市民権取得の道を開くのに加え、科学技術系の人材や起業家の受け入れを拡大することが柱だ。超党派の上院議員グループも同様の改革案を提示しており、今後は法制化に向けて妥協点を探る。
大統領は、不法移民を低賃金で違法に雇う雇用主がいるため、米労働者が不利益を被っていると指摘。移民制度の改革は中間層や米経済の強化につながると強調した。「いまこそ常識的で包括的な移民制度改革を実施する時だ」と訴えた。
改革案の主な内容は、不法移民に犯罪歴調査や罰金などを科すことを条件に永住権や市民権の取得を許可するほか、米大学で科学技術系の修士・博士号を取得した外国人には永住権を付与するというもの。起業家への「始動ビザ」発給や、同性愛者を含む米国民の家族への永住権付与規制の緩和、犯罪者に重点を置いた強制退去執行なども盛り込んだ。
一方、上院案は政府が国境警備と入国管理の強化を実施するまで不法移民への永住権付与は解禁しないという前提条件を付けている。オバマ政権側は国境警備は既に強化したと主張しており、両改革案の擦り合わせで難航が予想される。大統領改革案の同性愛者の移民規制緩和にも抵抗が予想される。
さらに下院共和党には、不法移民に永住権や市民権を付与すること自体への反対論も根強い。上院は夏までの法案可決を目指すが、成立の見通しは不透明だ。