ユーロ圏GDP0.2%減 6期連続のマイナス成長
【ブリュッセル=御調昌邦】欧州連合(EU)統計局は15日、ユーロ圏の1~3月期の域内総生産(GDP)が前期に比べ実質で0.2%減ったと発表した。年率換算では0.9%減。金融危機の影響が長期化しており、マイナス成長は2011年10~12月期以来6四半期連続、景気後退は1999年の単一通貨ユーロ創設以後で最長。明るさの見えてきた日米とは対照的で、財政や金融面での対応を求める声が強まりそうだ。
前期比伸び率は市場予測の中心(0.1%減)を下回った。国別にみると、ドイツは前期比で0.1%増とプラス成長を確保した。独連邦統計庁によると、個人消費がけん引した。
しかし他の主要国は軒並みマイナス成長で、フランスは0.2%減。仏国立統計経済研究所は企業の設備投資や輸出が振るわなかったと分析している。イタリアとスペインはともに0.5%減、キプロスは1.3%減。英国などが加わるEU全体では0.1%減だった。
EU統計局は当初、ユーロ圏の12年1~3月期をゼロ成長と発表したが、その後マイナス0.1%減に改定した。これにより、現在のユーロ圏のマイナス成長の期間は、08年のリーマン・ショック直後に記録した5四半期を超えた。
失業率も高まる
08年当時はユーロ圏GDPが最大で前期比2.8%減を記録したのに対し、今回は最大でも12年10~12月期の0.6%減。景気の谷は、今回の方が浅い。ただ失業率は当時の7~9%台から12%に高まっており、雇用と内需不振の問題は深刻だ。
自動車などの高額消費だけでなく、一般的な消費も落ち込み始めている。小売り大手の仏カルフールは仏国内の1~3月期の売上高が前年同期比0.7%減、他の欧州では3.6%減となった。
欧州委員会は、4~6月期には外需が主導する形で小幅なプラス成長に復帰するとの見通しを示している。ただ昨年には「景気後退は短期で終わる」との見方を示していたこともあり、市場からは「すでに景気回復期に入ったとみるのは楽観的過ぎる」(イタリア・ウニクレディト)との指摘も出ている。
苦しい時の「外需頼み」にもリスクがある。中国など新興国の景気には不透明感が残るうえ、通貨ユーロが昨年に比べて上昇しており、ドイツなどに比べて競争力の低い南欧などの輸出が伸びない可能性もある。
政策対応に期待
個人消費や設備投資といった民間需要の自律的な回復が当面は期待できない。このため政策余地は小さいものの、財政・金融両面から景気を支えるべきだとの意見が強まりそうだ。オランド仏大統領は15日、ブリュッセルでバローゾ欧州委員長と会談し、「成長が最重要課題」との認識で一致した。米政府も欧州景気を下支えするための財政出動を求めている。
欧州中央銀行(ECB)は5月上旬に政策金利を0.25%引き下げて過去最低の0.5%としたが、市場ではユーロ圏の景気が上向かなければ追加利下げもあり得るとの見方が出ている。