台湾エイサー最終赤字440億円、CEO引責辞任へ 7~9月
【台北=山下和成】台湾のパソコン大手、宏碁(エイサー)が業績悪化に苦しんでいる。5日に発表した2013年7~9月期の最終損益は131億台湾ドル(約440億円)の赤字となった。最終赤字は2四半期連続。パソコン販売の減少や、のれん代の減損処理が響いた。王振堂董事長(会長)兼最高経営責任者(CEO)は同日、自身の辞任や大規模なリストラを表明。今後も厳しい経営が続きそうだ。
エイサーは当初、6日に決算発表を予定していたが、5日に前倒しした。営業損益は26億台湾ドルの赤字。さらに07~08年に買収した同業の米ゲートウェイや欧州のパッカードベルなどののれん代の減損処理が発生し、最終ベースでの赤字額が膨らんだ。
連結売上高は前年同期比12%減の921億台湾ドルだった。米調査会社のIDCによると、エイサーの7~9月期のパソコン出荷台数は前年同期比で35%減。主力の個人向けパソコンの需要がタブレット(多機能携帯端末)に侵食された。
エイサーは5日夜に台北近郊で緊急記者会見を開催。王董事長兼CEOは「ここ数年、業績が悪く、責任を取るべき時期だ」と語った。14年1月1日付で、まずCEO職を翁建仁総経理(社長)に譲り、同年6月の任期満了後に董事長も辞任する。
同時に、全世界で約8千人の従業員の7%削減などリストラの方針も発表した。1回目のリストラ費用として1億5000万米ドル(約150億円)を計上し、13年10~12月期の業績に反映する。14年以降は人件費などの削減で年間1億米ドルのコスト低減を目指す。
エイサーはパソコンで世界シェア4位。00年代以降は、工場などの資産を極力持たない「アセットライト」戦略を推進、低価格品を大量に販売する手法で成長した。
ただ11年以降は主力市場の欧州危機や研究開発力の低下などを受けて、利益がほとんど出ない状況が続いている。パソコンへのこだわりからタブレットやスマートフォン(スマホ)事業の強化でも出遅れ、デジタル転換の波から取り残されている。
株価も約11年ぶりの水準に低迷。最近は同業の台湾・華碩電脳(エイスース)との合併などの観測や、王氏の辞任観測も浮上していた。王氏は05年に董事長に就任した実力者で、いったんは自身の辞任などを否定していたが、早期の業績改善が見込めないことから引責辞任に追い込まれた形だ。