米、特許権行使乱用行為取り締まりへ 法改正などで
【ワシントン=矢沢俊樹】オバマ米大統領は4日、不適切に特許権を行使して企業から巨額の賠償金などを得る行為を取り締まる意向を表明した。悪質な特許保有会社に権利の情報開示を義務付けるのが対策の柱。スマートフォン(スマホ)開発などを巡り、企業が特許訴訟を恐れて技術開発に影響が出るケースが増えているため、対策を急ぐ。
経営実態の不確かな「特許保有会社」が、特許権侵害を盾に他の企業から多額の資金を得ようとする手口が増えている。一般に「パテント・トロール」(特許の流し釣り)と呼ばれ、米企業だけでなく日本企業にとっても脅威が増している。
オバマ大統領は、米議会に特許法改正など7項目の法整備を求めた。具体的には、特許権の支払いなどを企業に迫る特許保有会社(代理人)を対象に、「特許を最終的に所有しているのは誰か」「特許料はどこにどう流れるのか」などの重要情報を定期的に開示するよう義務付ける。
悪質な特許保有会社は、特許使用料や賠償金を得る狙いを隠すため、複数の会社で「偽装企業」を設立したり、使用料が流れる「親企業」を隠す事例が目立つ。オバマ大統領は法改正により情報開示を義務付け、不適切な請求を防ぐとともに、行政の監督が行き届くようにすることを目指す。
さらに、特許訴訟を巡る米連邦地裁の権限を強め、悪質な特許保有会社の「特許権の乱用」を認めた場合は制裁として保有会社側の弁護士報酬を制限できるようにする。悪質な会社を支える弁護の受け手を減らし、特許を使う側の企業などの保護を強める考えだ。
特許を保有会社に移すこと自体は、技術開発などを促すうえで有益だ。しかし、資金稼ぎ狙いの賠償請求などが急増しているため、企業が萎縮する傾向も強まっている。ホワイトハウスによると悪質とみられる特許訴訟は、スマホの普及などに伴いソフトウエア分野をはじめ2012年に2500件発生した。中小を含む多くの企業が訴訟に巻き込まれており、07年から4年間の経済的な損失は3千億ドル(約30兆円)に上ったという試算も示した。