楽天優勝と「あまちゃん」効果 楽しく金使い、使わせる
(村山らむね)
9月26日木曜日の東北楽天ゴールデンイーグルスのプロ野球パ・リーグ初優勝、28日土曜日のNHK総合の連続テレビ小説「あまちゃん」最終回。今「東北が熱いよね」なのだ。
(1)楽天球団の優勝と「あまちゃん」効果で東北が注目されている。
(2)消費増税後も楽天市場のポイント制度や宣伝効果は威力を発揮する。
(3)楽しく金を使い、使わせることを考えれば東北や日本が元気になる。

まずは「あまちゃん」の「おしん」以来ともいえるブーム。ソーシャルメディアで思わず感想や発見を共有したくなる伏線の張り方が15分に凝縮されたことや、世代や性別を超えて共感できるファンタジーな部分とリアルさが魅力だったのだろう。1つの回につき5回見る機会があるのも様々なライフスタイルの視聴者に受け入れられたようだ。
今まで東日本大震災を正面から語るドラマはなかったが、これで乗り越えるきっかけができたのではないか。「アマノミクス」という言葉も出てくるほどの経済効果も表れている。NHKの公式サイトのネットショッピングコーナーにはかつてないほどの公式グッズが紹介されている。
アマゾンのDVDランキングでは、あまちゃんDVD-BOXが予約開始の段階から2カ月以上にわたり100位内にランキングされている。岩手県久慈市ではロケ地巡りが人気を呼んでいる。
そして楽天球団の優勝。楽天創業者の三木谷浩史氏は阪神大震災に直接被災はしなかったが親戚が被害にあい、それが創業のきっかけのひとつになったという。
その楽天の優勝セール。74時間の売り上げは1日あたり最高額(150億円)を記録した今年7月のスーパーセールと拮抗する額を達成したと思われる。星野仙一監督の背番号77にちなんで、77%オフの商品を1時間毎に放出するタイムセールや「仙一」にちなんで1001円の商品を集めたコーナーなど、工夫と意外性にあふれたセールだった。実際に売り上げ最高記録を達成したというショップ店長の喜びの声が、フェイスブックなどで続々と上がっていた。
もともと楽天市場ではヴィッセル神戸と楽天イーグルスが勝利した翌日は、エントリー(簡単な登録)するとポイントが2倍になる。両方が勝った翌日は3倍になるため、ネット買いの達人たちは、その日までほしいものを「お気に入り」に登録しておき、購入するというのが定石になっている。こういうプロモーションがあるとチームを応援するようになるのが人情だ。

来年4月からは消費税が3%上がる。できるだけ買い物時に付与される各種ポイントで税率アップ分をカバーしようとする人が増えると予想され、今後もこの宣伝が続くなら楽天市場は力を発揮するだろう。通常のポイント、楽天カードで決済、イーグルス&ヴィッセル勝利で合計4%のポイントがつくからだ。
楽天優勝とあまちゃんに共通するのは、かわいそうな東北ではない。かっこいい、強い、かわいい、明るく元気な東北だ。もちろん被災の傷はそう簡単には癒えない。しかし、この2つのドラマが東北をハレの空間にした功績は大きい。
あまちゃんの中で「あんたみたいな金持ちがどんどん金を落としてくれ。そうすればわれわれはどんどん元気になる」というセリフがあった。
これは東北以外の人間に向けられた言葉だろう。遠くから同情するのではなく、現場に足を運んだり、ネットを駆使してお取り寄せをしたり。消費することが何よりも東北の人を元気にして、日本を元気にする。
7年後の東京五輪という日本中の明るい目標ができた今「東北のこれから」のためにも楽しくお金を使うこと、使わせることを、それぞれの立場で真剣に考えていくことが求められる。
もちろん今一番求められているのは、楽天イーグルスの日本一記念セールと「あまちゃん2」である。
[日経MJ2013年10月4日付]