首相、賃上げ要請へ 経済3団体トップと会談
安倍晋三首相は12日昼、経団連、経済同友会、日本商工会議所の経済3団体トップと首相官邸で会談し、デフレ脱却に向けて業績が改善した企業から賃金を引き上げるよう要請する。春季労使交渉を控え、家計の所得を増やして景気回復につなげる狙い。大胆な金融緩和策や積極的な財政出動を進める安倍政権の経済政策の成果を暮らしに波及させたい考えだ。
会談では安倍政権の経済政策や日本経済の現状などについて意見を交わす見通し。経済団体からは経団連の米倉弘昌会長、日本商工会議所の岡村正会頭、経済同友会の長谷川閑史代表幹事らが出席する予定だ。
首相はこれに先立つ12日午前の衆院予算委員会の集中審議で、経済団体との意見交換の場で「賃上げ、一時金で経済を良くして多くの国民が景気の変化を実感できるよう協力してほしいとお願いする」と述べた。
政府の働きかけを受け、ローソンは7日に若手と中堅社員の年収を引き上げると発表した。甘利明経済財政・再生相は12日の閣議後の記者会見で「これに続く経済界の反応を期待している」と強調。「実際の生活に跳ね返ってくるところまで進めていかないと(景気回復は)本物になっていかない」と指摘した。
安倍政権は大胆な金融緩和、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略の「3本の矢」でデフレ脱却を目指す方針を掲げる。昨年12月の衆院選で自民党が大勝して以降、円高修正や日経平均株価の上昇が進んでいることから、自動車や電機などを中心に収益改善の兆しが出ている。
首相は5日の経済財政諮問会議で「業績が改善している企業には報酬の引き上げなどを通じて所得の増加につながるよう協力をお願いしていく」と表明。諮問会議の民間議員も、金融緩和などを経済再生につなげるには「企業努力の成果を雇用・所得増加につなげる好循環」が必要と指摘した。
政府は正社員・終身雇用に偏った労働市場を改革して、国民全体の所得水準の底上げを目指す方針。物価上昇率目標の2%を達成しても、名目賃金が上がらなければ実質的な所得水準は目減りしかねないとの批判が出ているためだ。
政府内には「(賃金水準全体を底上げする)ベースアップが難しいところにはボーナスだけでも上げてくれませんかと要請していきたい」との声が出ている。
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