ウクライナ経済注視 G20閉幕、金融支援で連携
【ワシントン=森本学】ワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は11日午後(日本時間12日未明)、「ウクライナの経済情勢を注視する」とする共同声明を採択して閉幕した。ウクライナ情勢を巡って欧米諸国とロシアの対立が続いているが、経済問題ではG20として連携していく姿勢をひとまず保った。
今回のG20会議は、ロシアによるクリミア編入を受けて主要8カ国(G8)による国際協調の枠組みが崩壊した後、米欧とロシアが初めて向き合う国際会議となった。ロシアに配慮を見せる新興国と、日米欧の先進7カ国(G7)が、どこまで足並みをそろえられるかが焦点だった。
「ロシアは積極的に関わった」。議長を務めたオーストラリアのホッキー財務相は閉幕後の記者会見でこう強調。ロシアのシルアノフ財務相は10日、「国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)と一緒にウクライナ支援に参加する用意がある」と記者団に話した。
10日の米ロ財務相会談ではロシアがウクライナ介入を強めれば制裁強化すると警告したルー米財務長官も、会議ではロシア批判を封印した。麻生太郎財務相も11日の閉幕後の記者会見で「地政学的な不透明性の低減に向け、G20が緊密に連携することが重要だ」と語るなど、会議はウクライナ問題で協調姿勢を演出することに腐心した。
これを受け、共同声明は連携をアピールする内容となった。ウクライナについて「経済や金融の安定へのいかなるリスクにも留意している」と言及。IMFを中心に検討している金融支援が必要だとの認識で一致した。
ウクライナは昨年末時点の対外債務が1400億ドル(約14兆円)に達するなど、財政破綻の懸念が高まっている。うち650億ドルは支払い期限が迫っており、2月にIMFなどに2年で350億ドルの金融支援を求めていた。ロシアはウクライナの対外債務の多くを保有しており、自国の債権を保全するため、米欧に歩調を合わせた。
世界経済の成長底上げを巡っても、政策協調を前面に出した。G20会議は前回2月のシドニー会合で、今後5年間で国内総生産(GDP)を2%引き上げる成長目標を設定。11月に豪ブリスベーンで開くG20首脳会議(サミット)での行動計画のとりまとめに向けて議論を始めたが、具体的な進展はなかった。
共同声明では「過去のG20におけるコミットメント(約束)を発展」させると明記。過去の改革案の焼き直しにとどまらず、新たな改革案を打ち出すことで合意した。9月に開く次回のG20財務相・中銀総裁会議までに具体策を示すことも確認。改革加速で連携する姿勢をアピールした。
一方で、各国の溝が浮き彫りになった分野もある。IMF改革では、新興国の発言権を拡大する改革案が米国議会の反対で進んでいない。共同声明では「深い失望」を表明し、米国に一刻も早く議会承認を取りつけるよう求めた。新興国などで根強い米国への反発に配慮したとみられる。
米国の量的緩和の縮小を巡っても、新興国が反発を強めている。共同声明では名指しこそ避けたものの「政策のあり方を調整し直す際には、世界経済への影響に留意する」と明記した。