企業の1年後物価見通し、平均1.5%上昇 最多は1%
3年後・5年後は平均1.7%
日銀は2日、3月の企業短期経済観測調査(短観)のうち企業の物価見通しを公表した。全規模全産業による1年後の消費者物価指数(CPI)見通しは平均で前年比1.5%上昇だった。回答の割合をみると、1%上昇と答えた企業の比率は29%、2%上昇との回答が19%で次いだ。
日銀は3月の短観から企業の物価見通しを新たに調査項目として追加。今回が初めての公表となる。約1万社に対して「1年後」「3年後」「5年後」の主要な製商品・サービスの販売価格やCPIの見通しをたずねた。回答にあたっては、消費税など制度変更の影響は除くように依頼している。
全規模全産業の「3年後」のCPI見通しは平均で1.7%上昇、「5年後」も1.7%上昇だった。もっとも、予測期間が3年や5年といった中長期になるほど「不確実」との回答が増えた。
業種別にみると、大企業では製造業、非製造業ともに「1年後」が1.1%上昇。非製造業では「3年後」が1.3%上昇となる一方で、「5年後」が1.2%上昇となるなど伸びが一服する見通し。
中小企業では製造業、非製造業ともに「1年後」が1.7%上昇、3年後や5年後には1.9%上昇と、大企業に比べて高めの物価上昇を見込む傾向があった。日銀は「人手不足など価格のプレッシャーを感じやすい状況にあると、心理的に影響してくることはあるかもしれない」(調査統計局)とみている。
併せて公表した販売価格の見通しでは、全規模全産業の「1年後」の平均は足元の水準と比べてプラス1.1%を見込んでいる。大企業製造業では「1年後」がプラス0.2%、「5年後」にはマイナス0.3%となるなど、非製造業や中小企業と比べて価格動向に弱気の見通しが目立った。
日銀は2%の物価安定目標の実現に向け、昨年4月に導入した量的・質的金融緩和で企業や家計などの物価予想を示す期待インフレ率を引き上げることを目指している。これまで金融市場や家計の期待インフレ率を推し量る指標はあったが、企業の物価見通しを知る統計は限られていた。日銀は「初回調査なので、統計がどのようなクセやばらつきをもっているかの情報がない。回数を重ねて、データの蓄積を待ちたい」としている。〔日経QUICKニュース(NQN)〕