次の日銀総裁、29%が竹中氏推す
クイックVote第117回解説 編集委員 清水功哉
日銀は1月22日、2%の物価目標を導入し、「できるだけ早期に実現することを目指す」と約束しました。4月に就く次の総裁は、目標実現に向けた政策運営という重要な役割を担いそうです。では、だれが望ましいのか。電子版読者の回答では、竹中平蔵慶応大教授が2位の倍以上の支持を得るダブルスコアで首位となりました。
竹中氏を挙げた回答者の比率は29.4%、2位の浜田宏一米エール大名誉教授(14.3%)、3位の武藤敏郎大和総研理事長(13.8%)に大差を付けました。
竹中氏は小泉純一郎政権時代に経済財政相などを歴任。政策に積極的に関与するタイプの学者。金融政策に関しても、物価目標導入や積極的な緩和の必要性を主張してきました。竹中氏を推す読者からはこんなコメントが集まりました。
○諸外国の金融政策について十分な知識を有し、かつ英語が堪能で発信能力も十分備えている(77歳、男性)
○同盟国の金融当局との信頼関係を構築できる(61歳、女性)
○経済理論が分かっていて頭の回転が速い。政策実行能力・経験もある(45歳、男性)
竹中氏が多くの支持を集めた背景には、デフレ脱却への熱心さだけでなく、国際性や経済に関する知見などもバランス良く備えていると見られている点がありそうです。実際、次の総裁に求める資質・姿勢について優先する2項目を聞いたところ、最も多かったのが「国際的な発信力」(25.7%)、次が「経済に対する知見」(24.7%)で、3位の「デフレ脱却に全力を傾ける姿勢」(24.1%)を上回りました。
多くの支持を集めた竹中氏ですが、辛口のコメントもありました。
○小泉政権時代に見られたように自己主張が強すぎる(64歳、男性)
○新自由主義者の竹中氏は論外(39歳、男性)
2位の浜田宏一氏はデフレ脱却に向けた思い切った金融政策の必要性を説き続け、その姿勢を安倍晋三首相も高く評価している学者。内閣官房参与も務めています。本人は日銀総裁への就任要請があっても固辞するとの考えを示していますが、読者からこんなコメントが寄せられました。
○日銀、財務省などの思惑に乗らず、前例踏襲主義によるデフレ継続の愚を繰り返さない人物(47歳、男性)
○最も正しいことを平然と述べている印象がある(35歳、女性)
財務事務次官、日銀副総裁を歴任した3位の武藤敏郎氏に関しては、財政当局OBである点を肯定的に評価する指摘がありました。
○財務次官時代から見識や組織運営力はすばらしい」(62歳、男性)
○財政規律を守りつつデフレと戦うには、財務省OBで民間にも転出した武藤氏の見識が求められる(37歳、男性)
武藤氏と並ぶ有力候補とされる岩田一政日本経済研究センター理事長は10.2%で4位でした。
次のような点が評価されました。
○日銀副総裁時代の骨のある投票行動と国会同意人事上の敵の少なさ(49歳、男性)
同率の4位だったのが岩田規久男・学習院大教授。支持する読者の意見はこんな具合です。
○正しい経済政策を長年言い続けてきた(30歳、男性)
回答総数 | 1758 |
---|---|
男性 | 94% |
女性 | 6% |
20代以下 | 6% |
30代 | 13% |
40代 | 23% |
50代 | 24% |
60代 | 24% |
70代 | 9% |
80代以上 | 1% |
なお、日銀に大胆な金融緩和を求める安倍内閣の姿勢については、「支持する」が82%と圧倒的な多数派となりました。デフレからの脱却を極めて多くの方々が望んでいて、金融政策にその役割を期待していることが浮き彫りになりました。読者の声です。
○首相が大胆な金融緩和を求め、日銀から物価目標検討のコミットメントをとっただけで円高が是正され、株価が上がった。日銀が今までいかに何もしていなかったかの証左(64歳、男性)
○日銀は国民のために金融政策を行っていたのか疑問。その日銀を変えるには外圧しかない(53歳、男性)
○世界標準の当たり前の政策。やっと普通の判断がなされた(40歳、男性)
年明け以降の株式相場の上昇などを受け、日銀の思い切った行動を望む空気が一段と広まっているようです。金融緩和にはリスクも伴うはずですが、前述の次期総裁に求める資質・姿勢に関する質問への答えを見ても、「極端なインフレなど副作用のリスクにも配慮する姿勢」(7.8%)や「日銀の独立性を守る姿勢」(6.0%)を挙げたひとは多くありませんでした。
もっとも、安倍首相の緩和要求を支持する人から、こんな注文が付いたことも紹介しておきましょう。
○政府もやるべきことをやり、日銀だけに責任を負わせないことが大事だ(40歳、男性)
18%と少数派ではありますが、大胆な緩和政策を求める安倍政権のスタンスを支持しない読者の声も紹介しておきましょう。
○お金は既に実需を上回って出回っている。これ以上の大盤振る舞いは、良くてバブルを生むだけ(58歳、男性)
○もっと規制緩和などを進め、民間活力を有効に活用できる環境作りに励むべきだ(57歳、男性)
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安倍内閣の支持率は81.1%でした。約1週間前の前回より11.5ポイントも高くなりました。「アベノミクス」により政権交代から短期間で日経平均株価を上げ、円高も是正し「ロケットスタート」を図ったことが一段の支持を集めたようです。これから問われるのは、参院選を挟んで景気を上向かせる持続力でしょう。