堀江氏、会見でメディア事業に意欲 一問一答
仮釈放の元ライブドア社長
「保護観察なう」。27日午前9時58分、仮釈放の一報が堀江氏のツイッターのアカウントから発せられた。続けて「これからニコ生やりまっす!」。動画サイト「ニコニコ動画」の生放送サービス「ニコニコ生放送」を通じ、移動中の車内から姿を見せた。視聴には月額840円が必要で、さっそくしたたかな面をのぞかせた。
断続的に有料の生放送を続けた堀江氏は、午後4時前に「仮釈放後メッセージ」と題した3分間の動画をニコニコ動画に投稿。午後7時、弁護士を引き連れ、約150人もの報道関係者を前に会見に臨んだ。会見の内容は、ニコニコ生放送の無料の公式番組としてネット中継され、延べ12万7600人が生で視聴した。
「ライブドア事件で社会の皆さま、株主の皆さまにご迷惑をおかけしたことは深く反省しており、償うべく刑務所の中で頑張って受刑生活を送ってきた。この日を迎えられたことは万感の思い」「今後は、獄中からもメールマガジンを発行して言論活動をやってきたが、そういった活動も続けつつ、ロケット開発など宇宙事業のほうも続けていきたい」
会見冒頭、堀江氏はこうあいさつし、報道陣からの質問に答えていった。主な一問一答は以下の通り。
「普通の受刑者が体験しないような過酷なところ」
―― 一連の事件で損害を被られた方々、個別に訴訟を起こしている人たちへの今の気持ちは
旧ライブドアと私のあいだで包括的な和解をした流れの中で、集団訴訟に関してもすべて和解させていただきました。金銭的な問題は解決している。それ以外の個別の訴訟についても、獄中で和解交渉を進め、1件を除いて、すべて終わっており、残りも真摯に話し合いをさせていただいている。
経営責任は取ると、以前から申し上げてきた。株価が下落し、株主の方々にご迷惑をおかけしたことは、私の不徳の致すところ。刑事責任がどうであれ、それ(株主への責任)は解決していくという方針はまったく変わりません。誠実に対応してきたつもりであります。
―― なにが評価され、早く出所できたのか。どんな暮らしぶりだったのか
最初は東京拘置所にいたんですけれど、1週間ほどで長野刑務所に移送された。その後、訓練工場というところに入って、厳しい訓練をした後、身体障害者であったり、高齢で認知症の方がほとんどの養護工場で「衛生係」という職業に就かせていただきました。
衛生係というのは一般的な工場でいうと、配食をしたり洗濯物の管理をしたり掃除をしたりと、住み込みの家政婦さんみたいな役割なんですけれども、私が配属された工場は特殊でして。1人で入浴できない不自由な方の介護であったりとか、下の世話だったりとか、介護の現場に近いような内容。
ただ、一般的な介護現場と違って、刑務所というのはタイムスケジュールに沿った忙しい現場。文字通り汗水垂らして、怒鳴られながら働く、なかなか過酷な現場。周りの受刑者や刑務官にも言われたんですけれど、一般的にはそこ(養護工場)に配属されると、たくさん仮釈放がもらえると。いうくらい、普通の受刑者が体験しないような過酷なところでした。
「ネットを使った新しいニュース批評を事業化していきたい」
同僚の衛生係も、だいたい刑期の4分の1を残して出所される方が多かった。だから、そこに配属された時点で、反則行為をしたりしなければ、わりと早く出所できるところだったのかな。僕は生来、まじめな性格なもんですから、そういう環境に置かれるとまじめにしっかりやる人間でして、そこが評価されたのかなと。
―― ロケット事業以外で、今後チャレンジしたい新しい事業、行ってみたい社会貢献は
まず事業に関していうと、ライブドアの社長を辞めた時は正直、ITの仕事はおなかいっぱいかなぁと思ってたんですけれど、パソコンやスマホやネットから切り離された1年9カ月を送ってみると、わりと、そろそろやってもいいかなと思ってきたのも事実でして。
今やっているメールマガジンもそうなんですけれど、インターネットを使った新しいニュース批評のかたちを事業化していきたいと考えているところですね。具体的には近いうちに何らかのサイトを作ることになると思いますけれども、わりと自分自身が今までマスメディアのあり方で不満に思っていた部分、こうなればいいんじゃないかなと思っていた部分を実現していきたい。
今のITの会社は、ソーシャルゲームをやられていますけれど、私はあまり興味がなくて。興味ないことに頑張りすぎちゃうと、また前のライブドアみたいなことになる。そこは反省がありまして、興味がないことはやらない。ネットを使った新しい報道、ニュースのあり方は1つの例ですが、そういったことを事業化していきたいですね。
「更生保護施設などのお手伝いができれば」
社会貢献は、刑務所にいる人たちはべつに極悪非道でも一風変わった人でもなく、普通の人たちなんですね。社会にいる普通の人たちが何かのきっかけで犯罪者になってしまうということは十分あり得る。刑務所から出てきたそういった人たちが、私も含めてですけれど、ふたたび犯罪を起こさないことが大事なんじゃないかなと。そのためには、受刑者への偏見を少なくして、社会が受け入れて、再犯を減らす、ということが社会のためになるなと。
中に入って、受刑者の再犯率は5割を超えているという話を刑務官から聞いた時、僕は衝撃を受けたんですけれど、社会に復帰しても立ち直れないでまた刑務所に戻るのは、社会的にも損失だなと。何かしらのかたちで、刑期を終えて身よりがないような方々を保護する更生保護施設などのお手伝いができればいいなと思っています。
ほかにもやりたいことはいっぱいあって。中では有り余る時間がありましたので、いろいろと勉強もしました。例えば、飛行機の操縦免許の勉強も一通り終わりましたし、生命科学系の本もたくさん読んでかなり造詣は深まったし、そういったこともやっていきたいなと。
「正直、学習しました」
―― ずいぶんやせた。内面も、話し方、内容も変わった。これが本当の堀江貴文か
外見に関しては、もともとやせていたんですよ。高校や大学は(やせた)今くらいだったんですね。会社を立ち上げて10年で上場してでかくしていくという流れの中で、やっぱりけっこうプレッシャーもあり。私はプレッシャーで太るタイプの人間で、ストレスを酒と食べ物で発散して30キロ太った。でも、おかげさまで規則正しい生活を送り、やせました。今後はまた忙しくなると思うんですけれど、そこはあまり自分にプレッシャーをかけすぎないようにしたい。
内面は、変わったかもしれないし、変わってないかもしれない。2004年ごろは、注目されて、こうやって囲まれて、質問受けて返すということに慣れていなかった。あとは若かった、怖いもの知らずだった。わりとイケイケでやってたし、あんまり考えないで発言していた。それによって反発も受けましたけれど、べつに反発受けてもいいやという感じでやってきたと。
で、2006年のライブドア事件がありまして、世の中から反発受けると、こういうことが起こるんだと、正直、学習しました。特に、皆さん(メディア)との、あるいは社会との付き合い方について、実体験で学ばせていただいた。私の場合、自分の中で35歳くらいまでに何かをやらないとやばい、という強迫観念みたいなものがありまして、それで焦っていた部分もあります。
今は裸一貫という状況になって、社会的責任も上場企業の社長をやっていた頃に比べると大してないわけですから、そんなに自分にプレッシャーかけなくてもいいんじゃないかと。そんな気持ちになってきた、というのが内面の変化です。
「世の中に虚業なんてものは存在しない」
―― 「虚業」についての考え方は
私は、そもそも世の中に虚業なんてものは存在しないと思っています。何でもそうですけれど、世の中をよくするため、あるいは自分や家族が食べていくために、みんな一生懸命、頑張っている。その生業に対して虚業と言うこと自体、何なの、おかしいんじゃないですか、と。何かしら社会に必要とされているから存在しているわけであって、一生懸命働いている人たちもいるんだから、それを虚業といっておとしめるようなことをしちゃダメだよと思いますね。
―― 日本の株式市場が上昇している。株式投資に関心があれば、考えを聞きたい
僕はもともと株式投資に興味はなくて、自分の会社が上場して初めて、ちゃんと株式投資のことを勉強したくらいの人間でして。まぁ、景気がよくなってムードができてくることは、すごくいいことだと思うんですね。安倍内閣が発足して、口先介入じゃないですけれど円安に振れて、それで日本株が世界的に割安に見えて、外国人投資家のお金が入って株価が上昇してくると。そしたら日本の投資家も元気になって、また株価も上がっていくという。
それは、いろんな新聞によると実態をともなわない上昇であると、おっしゃる通りなんですけれど、まずはそういったところから景気の上昇は始まって、企業にカネが回り出して、投資をして、さらに景気がよくなると。全体的には僕はいいことだと思います。
だけれども、当然、バブルは起こると思います。で、またバブルははじける。たぶん、それは繰り返すだけのこと。これは、一般投資家の方々に言いたいんですけれど、景気が上がってる時に株や土地を買うのはいいんですけれど、あんまりのめり込みすぎないでくださいね、と本当に言いたい。
ライブドア株が暴落してご迷惑をおかけしたことは本当に申し訳ないと思っています。お叱りのお手紙もたくさんいただきました。例えば年金を全部突っ込みましたとか。ホント、申し訳ないと思うんですけれども、そういうのはもう、やらないでください。それは、よくないです。株とか投資は、自分の全財産を突っ込むようなもんではない。多くても半分くらいにしておいた方がいいと思います。安全な資産で残しておいてください。
「もうそんなに注目されていないんじゃないのかな」
―― これだけ多くの報道陣が集まったことについて、どう感じているか
正直、びっくりしました。何でやろ、というのが正直な感想でして。自分的には、もうそんなに注目されていないんじゃないのかなと思っていて。出てから、どうしようみたいな、ちょっと不安になる部分もあったんですけれど、びっくりしましたね。僕なんかの話をこんなにたくさんの方々に聞いていただけて、ありがたいな、と思っているのが正直なところですね。
これは僕の勝手な想像ですけれど、期待されている、そういう部分もあるのかなと思っていて。勝手ながら、応えていかないといけないのかなと。刑務所の中で、なかなか寝付けない時にいろいろと考えることがあって、考えてきたことを具体化していければなと。世の中、こんなに素晴らしい技術があって、普及すればもっとよくなるのになって、もどかしくなる気持ちがあって、それを皆さんに伝えていきたいな、というのが素直な気持ちですね。
―― 刑務所を出て最初のご飯は
起床時間前に起こされて食べたのはご飯と味噌汁と納豆だったんですけれど、出所して電話連絡やニコニコ生放送で時間をとられ、散髪にいったりもしまして。忙しくて、マック(マクドナルド)でもいいかなと。「てりたまセット」を食べました。刑務所で薄味に慣れてちょっと味が濃かったですけど、おいしかったです。
(電子報道部 井上理)