シャープ、自動洗米できる炊飯器
回転翼を内蔵、「ビタミンや甘み成分多く」
シャープは23日、回転翼を備え自動洗米できるIH式炊飯器「ヘルシオ炊飯器」を発表した。同社によると、回転翼を搭載した炊飯器は業界初という。天板部の液晶ディスプレーや操作ボタンの形状、内蔵している炊飯メニューの数などが異なる2モデルがあり、実売価格は7万~9万円。発売は9月20日を予定している。
新製品には、内ぶたの裏側に折り畳み式の回転翼を2枚装着。内釜にコメと水を入れ、炊飯前に回転翼でかきまぜることで自動洗米する。手洗いで洗米した場合、ヌカだけでなくうまみ成分や栄養素を削り取ってしまう場合が多かった。同製品で自動洗米した場合、ヌカだけを洗い流すことができビタミンB1などの残留量を増やせるほか、洗いムラも抑えられるという。回転翼の速度は毎分150回、洗米の所要時間は30秒~1分間程度。なお、洗米後はユーザーが水を捨て、改めて炊飯用の水を入れる必要がある。
炊飯時にも回転翼を動かす。加熱中は、内釜の内部全体がむらなくセ氏60度前後になるようにする。同社によると、糖分を作り出す酵素が60度前後で最も活発に働くため、炊き上がったご飯の糖度が従来機より最大2割弱増えるという。炊き上がり直前の沸騰中には、回転翼で泡を切ることで、うま味成分が吹きこぼれるのを防げるという。このほか、炊飯前の吸水時にも回転翼を動かし、コメの吸水ムラをなくせる。5.5合のコメの炊飯にかかる時間は、標準コースで47分、甘み成分を増やすコースは57分だ。
開発にあたって、回転翼の素材や形状を決めるのに最も時間を要したという。「回転翼を動かしたら折れてしまうことが何度もあった。折れないようにアルミニウム合金などの金属で回転翼を試作したところ、コメが割れてしまうといった問題も発生した」(シャープ 調理システム事業部 新規事業推進プロジェクトチーム チーフの田村友樹氏)。最終的に、エンジニアリングプラスチックを採用することで回転翼の強度と耐久性を確保し、加えて回転翼の先端をペンギンの翼に似た形状とすることでコメが割れる問題も解決したという。併せて、使用後に回転翼を取り外して水洗いできる構造とした。
「健康」旗印に、高価格帯市場で差異化図る
日本電機工業会によると、炊飯器の国内出荷はここ数年600万台前後、うちIH式炊飯器は400万台前後で推移し、いずれもほぼ横ばい。ただしシャープによると、実売5万円を超える高価格帯の構成比が徐々に高まっており、2009年度の22.5%に対し11年度は26.1%となっている。競合他社でも、パナソニックがスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)との連携機能を備えた機種を6月に発売したほか、タイガー魔法瓶と象印マホービンも釜の形状などに工夫を施した10万円超の高価格機の発売を8~9月に予定している。
これまでシャープは非IH式で実売1万円前後の低価格機を中心に販売していたが、今回のヘルシオ炊飯器で高価格帯の炊飯器市場に名乗りを上げる。「過熱水蒸気オーブン『ヘルシオ』などと同様、健康という軸で差異化できる技術を搭載したいと考えていた。解決策をずっと探していたが、それが見つかり商品化にこぎつけた。これまで高価格帯の炊飯器の競争軸は炊き上がりのおいしさだけで、健康という軸を打ち出している競合メーカーは1社もない。健康を意識する方に提案していきたい」(田村氏)として差異化に自信を示した。
国内のコメ市場では、あらかじめヌカを削った無洗米への引き合いが都市部を中心に増えているが、「全国平均で無洗米はコメ全体の10%前後。価格は普通のコメより高く、銘柄も少ないため、必ずしもニーズを満たしていない。自動洗米機能に対するニーズは大きいと考えている」(田村氏)としている。
同社では今回の新機種について、12年度に7万台、40億円の売り上げを見込む。
(電子報道部 金子寛人)