太らないお酒の飲み方 7つのルール
日経ヘルス
糖質の多いビールは最初の1杯だけならOK
飲み会の乾杯といえば、ビールが定番。「最初のコップ1杯だけならビールでも大丈夫」と話すのは、糖質制限(ローカーボ)食による糖尿病の食事療法を行う灰本クリニック(愛知県春日井市)の灰本元院長。
ビールがダイエットに不向きな理由は、「糖質」が多いから。糖質をとりすぎると血糖値が上昇、肥満ホルモンの「インスリン」が大量に分泌される。インスリンは余った糖を脂肪に変え、肝臓などにためこむ働きがあり、体重増加を招くからだ。
「太りたくなければ、血糖値が上がりにくい糖質の少ないお酒を選ぶのがベスト。だが、1杯目は飲みたいものをがまんしないほうがストレスも少なく、長続きしやすい」と灰本院長。2杯目以降で帳尻を合わせよう。
2杯目以降は甘くないか"糖質ゼロ"を
1杯目はビールでも、灰本院長お薦めの「2杯目以降のお酒の選び方」は、"辛口派"にスイッチすること。灰本クリニックで食事指導を受ける糖尿病患者が、実際にお酒を飲んだ後の血糖値の変化を自ら測定したところ、辛口の白ワインや赤ワイン、辛口の日本酒、焼酎などの蒸留酒なら、血糖値は上がりにくかったからだ(下グラフ)。「糖質ゼロのビール、砂糖の代わりに甘味料を使ったカクテルなども血糖値は上がらない。ただ、甘味料入りのお酒を10年以上長期飲用した場合の人での影響はわからない」と灰本院長。極めるなら"1杯目から辛口派"でもいい。
成分表示で炭水化物量選ぶ習慣を
糖質とは、炭水化物から食物繊維を除いたものの総称。だが、お酒の種類によって含有量のばらつきがある。好みのお酒の糖質量をチェックして、少ないものを選ぶようにするだけでも、太らないお酒の飲み方に一歩近づく。ビールなら容器の成分表示で「炭水化物」「糖質」の量を確認。ワインなら「辛口か、やや辛口のものを選んで。甘口は"やや"でもアウト」(灰本院長)。日本酒については、「"日本酒度"(注)を参考にするといい。+7以上の辛口は、血糖値も上がりにくいようだ」と灰本院長は説明する。ちなみに、酒度がマイナスの数字になると甘口になる。居酒屋のメニューに書かれていることもあるので参考にしよう。
酒豪さんも1日おきで脂肪肝を防ごう
"百薬の長"といわれるお酒も適量が大切だ。お酒を飲む人に起こりやすい脂肪肝は、いわば肝臓の"内臓肥満"で、様々な悪さをする。特に女性は、アルコール代謝の要である肝臓の大きさが男性に比べて小さく、解毒能力も低い。
「せめて1日たっぷり飲んだら、翌日はスパッと飲まないというふうにするのがお薦め」と、灰本院長。1日おきでもいいなら、続けられそうでは。
休肝日に飲みたくなったときは、ビール風飲料やチューハイなどの、ノンアルコールの商品を活用してもいい。灰本クリニックの管理栄養士の篠壁多恵さんも"左党"だが、「休肝日に飲みたくなったら、糖質ゼロのノンアルコール飲料を薦めている」と話す。
合い間の"ちょっと"でアルコールの代謝がアップ
ダイエットのためには糖質の少ないお酒を選ぶのが基本。だが、糖質を全くとらないと、逆にアルコールの代謝システムに支障をきたす場合もある。
空腹で長時間、糖質をほとんど補給しないまま飲み続けると、アルコールの代謝がスムーズに行われなくなる。アルコールは肝臓で代謝され、有毒なアセトアルデヒドから酢酸に分解されて排出される。
そして、酢酸の代謝の過程で、糖質からつくられるオキサロ酢酸が必要になるのだ。
「ちびちびと長時間お酒を飲んだりするときは、途中で焼売や蒸し餃子など、少しだけ糖質を食べるといい。アルコールの代謝を助けてくれる」(灰本院長)。とはいえ、ラーメンなど糖質量の多い麺類はご法度!"少しだけ"を心がけて。
チェイサーは飲んだほうが翌日むくまない
太らないように気をつけて飲んでも、翌朝むくんでいると太って見える。
「利尿作用のある緑茶やウーロン茶、冷たいミネラルウオーターなど、アルコール代謝を促す"体によい水"をたっぷり飲むといい」(灰本院長)。適量の飲酒は、血管を拡張させて血流を良くする働きもあるが、飲みすぎると「漢方でいう"湿熱"の状態になる。この"熱"を冷まして水分が体内に滞らないようにするには、"体によい水"が必要。排出が滞ると、翌日むくみが出る」と灰本院長。
お酒を飲む機会が増える時期だが、「お酒が強くない人は、決して無理をして飲まないで」と灰本院長はいう。下戸の人がつきあいで少量のお酒を飲んだときも、チェイサーなどでたっぷりの水分補給を忘れずに。
肝臓に負担がかかりにくい飲み方をマスター
「短時間で急激に血液中のアルコール濃度が高くなると、肝臓は解毒しようとフル稼働をして、大きな負担がかかる」と灰本院長。酒豪さんでも、「少しずつゆっくりと飲むように心がけて」(灰本院長)。湯豆腐のような大豆食品など、アルコールの代謝を助けるおつまみもお薦め。
【太りにくい!がまんしないお酒の選び方】
血糖値が上がりにくく、ダイエットの味方にしたい"糖質オフ"や"糖類ゼロ"のお酒。ここ数年は"本物"と遜色ないコクやおいしさを追求したものも。選ぶ際のヒントを紹介!
ビールの味や飲みごたえを決める要素の一つが、主原料で、糖質を多く含む麦芽。糖質オフや糖質ゼロをうたう発泡酒や"第三のビール(新ジャンル)"が、ビールに比べると水っぽく、物足りないといわれるのは、この麦芽の使用量が少ないから。ところが、最近は食物繊維でコクを出したり、大麦の使い方で本物のビールの味わいに近い商品が登場している。
アサヒビールが開発した糖質ゼロの発泡酒は、「食物繊維を添加してコクと飲みごたえをカバー。華やかな香りのホップで包み込んだ」(同社酒類開発研究所の清水二郎所長)という。ビール党にも支持者が多い。
ビール本来のおいしさを残しつつ、糖質70%オフの発泡酒を開発したのは、キリンビール。「麦芽の原料であり、おいしさを引き出すたんぱく質が多い大麦でビールらしさを補強。さらにフルーティでさわやかな香りのホップを使い、厚みのある味わいとした」(同社マーケティング部の田山智広主幹)。
一方、サントリーの"第三のビール"「金麦〈糖質70%オフ〉」は、「二条大麦の中でも、うまみ成分のたんぱく質を多く含む麦芽を主に使った。天然水で仕込み、雑味のないビール本来の味わいを実現した」(同社広報部の三上泰斗さん)。
缶チューハイやカクテルが好きで太るのが心配という人は、砂糖の代わりに甘味料を使ったものを取り入れるのも手。お酒はあくまで嗜好品。糖質オフやゼロのものを上手に活用して楽しもう。
この人に聞きました
灰本クリニック院長。NPO法人日本ローカーボ食研究会理事長。愛知県がんセンター研究所勤務などを経て、灰本クリニックを開業。2011年にNPO法人日本ローカーボ食研究会を設立。「お酒を代謝するには膨大なエネルギーが必要。お酒の代謝を助ける飲み方と"適量"を心がけて」
(ライター 松岡真理、構成・日経ヘルス 西山裕子)
[日経ヘルス2013年2月号の記事を基に再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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