エゾシカ残さ、効率処理 微生物で分解・重量10分の1に
生ごみ処理のHMエスパス(札幌市、佐々木保社長)はエゾシカの残さ処理技術を開発した。微生物で生ごみを処理する方法を応用し、重量を元の約10分の1程度まで減らすことができる。捕獲頭数の増加により道内自治体が処理に頭を抱えるなか、負担を大幅に減らせることをアピールし新市場開拓を目指す。
8~9月、興部町内で地元の猟友会のメンバーらが主体となって行った実証実験にHMエスパスが技術協力した。
おがくずや木材チップ、家畜のふん尿からなる菌床に、同社が独自配合した「エスパス菌」を混ぜ、エゾシカの死骸を投入。水分を調整しながら定期的にかき混ぜると1頭当たり約3日間で皮、骨、内臓、肉が一部を除いて分解された。約8立方メートルの菌床を用い、1カ月あまりの期間に12頭を処理した。
この手法を使えば「重量ベースで元の1割程度にまで減らせる」(HMエスパスの小西一郎取締役統括部長)という。興部町はこの技術を用い、気温が低い冬場の分解状況を調べるための実験をする方針だ。
市町村で排出されるエゾシカの残さは家庭ごみなどと同じく一般廃棄物扱いとなる。廃棄物処理施設で埋め立て、もしくは焼却処理されるが、水分が多いため腐敗や焼却効率が悪いなどの問題がある。2010年度に道内で狩猟・捕獲されたエゾシカは10万9377頭と00年度に比べて約5割多い。道のサンプル調査によると、エゾシカ10万頭当たり4000~5000トンの廃棄物が発生するという。
エゾシカ問題はこれまで、捕獲体制や有効活用の手段の確立・整備が議論の中心だった。今後は有効活用後に残った残さをいかに効率良く処理できるかが課題となってきそうだ。