クロマグロ規制強まる 幼魚の漁獲枠削減へ
マグロの漁獲規制が強まっている。オーストラリアで2日に始まった資源管理機関「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」の年次会合で、クロマグロの未成魚の漁獲枠削減が決まる見通し。日本の現在の漁獲量は、削減後の国別の漁獲枠を下回っている。当面の供給量に大きな変化はないが、将来の規制強化の地ならしとなり、中長期的には食卓に影響が出る可能性もある。
日本は北太平洋海域で揚がるクロマグロの大半を消費。大西洋では禁止されている未成魚が匹数ベースで漁獲のほぼ全量を占める。成魚の市場価格が1キロ数千円以上なのに対し、「メジマグロ」の名称で流通する未成魚は千円前後。最高級のクロマグロの幼魚としてブランド価値があり割安なため、スーパーや鮮魚店から重宝がられている。
ただ乱獲により、日本近海を含む北太平洋海域で親魚の資源量は過去最低水準まで減少。いわば、安さと引き換えに将来の資源を先食いしている状態だ。
資源枯渇を防ぐため、規制が強化される。WCPFC会合で北太平洋海域の未成魚(3歳以下)の漁獲枠を2014年に02~04年の各国の実績に比べ15%削減することが正式に決まる見通しだ。
ただ、資源回復への有効策になるとはいいがたい。日本では10~12年のクロマグロ未成魚の平均漁獲量が約6100トン。02~04年の平均(約8千トン)より既に2割以上少ない。15%の削減幅ではこれまで通りに取れる。
未成魚の漁獲は生産額の面からも損失が大きい。例えば1歳のメジを5年泳がせて成魚で取れば1匹あたりの価格は100倍以上になる。太平洋のマグロはメキシコ沖まで回遊する。同海域を管轄する全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)との連携もカギになる。
水産庁の宮原正典次長は「14年は過渡期との位置付け。本格的な資源の回復計画に取り組むのは15年から」と話す。来年2月に日米の科学者らが最新の資源評価を発表する。「予想以上に深刻な事態になっているのでは」とみる研究者も多い。15年以降は漁獲規制が一段と強まる可能性が高い。流通価格にも影響しそうだ。
幼魚の資源管理で先行する大西洋クロマグロには資源回復の兆しが出ている。09年以降、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)が漁獲枠を大幅に減らした効果が出て、13年に10年ぶりに枠を増やした。今年11月の年次会合で14年は据え置きと決まったが、15年には大幅増になる可能性が指摘される。