伊香保温泉、唯一現存の車両を展示へ 廃止の路面電車
群馬県渋川市の伊香保温泉の入り口に、1956年までこの場所を走っていた路面電車の車両が、来年春から展示される見通しだ。唯一現存する車両で、市民の一人が大切に保存していた。観光の新名所にしようと、市が計画。地元の古い世代からは、通勤通学の足だったチンチン電車を懐かしむ声が上がっている。
1910年、現在のJR渋川駅前と伊香保温泉を結ぶ鉄道が開業。急勾配を蛇行しながらゆっくりと行き来するため、「登山電車」と呼ばれ親しまれた。
56年に廃止された後、市内の医師、平形義人さんが1両を譲り受け、経営する病院の庭で保管していた。平形さんは既に亡くなり、長男の寿孝さんは「父はこの電車に思い入れがあり、塗装を何度も塗り直して維持していた」と振り返る。
伊香保から市中心部の高校に電車で通っていた無職の男性(77)は「どこへ行くにも乗っていた。若い人にも存在を知ってほしい」と"復活"を歓迎する。
渋川市は、路面電車の軌道があった温泉入り口部分を公園として整備し、2013年度中に完成させる予定。ここに車両を展示することにしており、担当者は「昔の思い出を引き継いで、語り合える場所にしたい」と話している。〔共同〕