規制委、原発避難の新基準 5キロ圏にヨウ素配布
原子力規制委員会(田中俊一委員長)は27日、定例会合で、原子力発電所事故時の新たな対応を盛り込んだ原子力災害対策指針(防災指針)の改定案を了承した。原発から半径5キロ圏内の住民は事故後直ちに避難することや、5~30キロ圏は毎時500マイクロシーベルト以上の放射線量を観測した場合に避難を始めるとの避難基準などが柱となる。
原発周辺の全国135市町村は指針に沿い、改定内容を地域防災計画づくりに反映させる。避難基準などを巡る議論の長期化に伴い、規制委の改定が遅れたため、計画策定期限の3月18日までに、作業が終わらない自治体が多いとみられる。
新指針は、おおむね5キロ圏の住民は、原発が全交流電源を喪失した場合などに避難準備を始め、全冷却機能喪失など「全面緊急事態」で避難するとした。甲状腺の内部被曝(ひばく)を防ぐため平時のうちに安定ヨウ素剤を住民に配布しておき、避難時に服用を指示する。
おおむね5~30キロ圏の住民は事故後はまず屋内退避し、自治体などが地上1メートルの放射線量をモニタリングする。避難基準の線量は、東京電力福島第1原発事故を踏まえ国際基準(毎時1000マイクロシーベルト)より厳しくした。
毎時20マイクロシーベルト以上を観測した地域の住民は1週間以内に一時移転し、放射線量の推移を確認する。同20マイクロシーベルト以上の地域産の食品は一律で摂取を制限。同0.5マイクロシーベルト以上の地域産品は、放射性物質の濃度が基準を超えれば摂取制限の対象にする。
規制委の田中委員長は、自治体の地域防災計画がないと、原発再稼働は困難との認識を示しており、計画づくりの遅れは再稼働時期に影響する可能性もある。