記憶忘却促す神経細胞を発見 九大など、線虫の実験で
九州大と名古屋大の研究グループは、線虫を使った実験で記憶を忘却させる働きのある神経細胞を発見したと発表した。この神経細胞から、記憶を保持する働きのある神経細胞へ忘却を促す物質が送られていることが分かった。研究内容は21日付の米科学誌セル・リポーツ(電子版)に掲載された。
研究グループは今後、哺乳類など複雑な神経構造を持つ生物で同様の神経細胞がないか調べる。
線虫は特定のにおいに反応し、においを発する物質に一度引き寄せられた後、しばらくは同じにおいに反応しなくなる。その後、記憶が薄れると再びにおいに反応するようになる性質がある。
研究グループは、時間がたっても記憶が薄れず、再びにおいに反応しない個体「突然変異体」を選別。詳しく調べたところ、「AWC」と呼ばれる特定の神経細胞が機能しなくなっていたことが分かった。
さらに正常に反応する線虫のAWCを調べると、においの記憶忘却を促すシグナルとして働く物質が、においの記憶を保持する神経細胞に送られていることも分かった。
研究グループの石原健九大教授は「この研究をもとに、ヒトなど高等生物で忘却が起こる仕組みが解明されることを期待している」と話した。