ヘイトスピーチ訴訟、高裁も賠償命令 在特会の控訴棄却
ヘイトスピーチ(憎悪表現)と呼ばれる差別的発言の街宣活動を繰り返し授業を妨害したとして、学校法人京都朝鮮学園が「在日特権を許さない市民の会」(在特会)などを訴えた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(森宏司裁判長)は8日、学校の半径200メートル以内での街宣禁止と約1200万円の賠償を命じた一審判決を支持し、在特会側の控訴を棄却した。
人種や国籍などで差別するヘイトスピーチを巡る高裁判決は初めてで、法規制の是非が改めて議論になりそうだ。
昨年10月の一審・京都地裁判決は、街宣や一連の行動を動画で撮影しインターネットで公開した行為について、日本も加盟している人種差別撤廃条約で禁じる人種差別に当たると判断。「児童らを怖がらせて通常の授業を困難にし、平穏な教育環境を損なった。学校法人の名誉も毀損した」と認定した。
判決などによると、在特会の元メンバーら8人は2009~10年、当時京都市南区にあった京都朝鮮第一初級学校近くで「朝鮮学校を日本からたたき出せ」「スパイの子供」などと拡声機で連呼した。
原告側は、マイノリティー(少数派)が自らの属する民族の言葉で教育を受ける「民族教育実施権」を侵害され、名誉も毀損されたなどと主張。第一初級学校を統廃合した京都朝鮮初級学校(同市伏見区)周辺での街宣禁止や、3千万円の損害賠償を求めて提訴した。
一審判決によると、在特会は「在日問題を広く一般に提起し、いわゆる在日特権をなくすこと」を目的とする団体。控訴審では「国籍による区別を主張しており、人種差別にも名誉毀損にも当たらない」などとして、「表現の自由」を強調。賠償額も「制裁的、懲罰的で高過ぎる」と訴えた。
街宣活動を巡り、刑事事件では、在特会側の4人が威力業務妨害罪などで有罪が確定している。