AKB48よりももクロが上 コンサート動員力2014
日経エンタテインメント!
日経エンタテインメント!では2014年に開催済みのライブと、年末までのスケジュールが発表済みのライブ(9月下旬時点)の会場収容人数を合計して、2014年中のアーティスト別の年間ライブ動員数を独自データとして算出した。
各会場のチケットが完売したと仮定しているため、実際の「動員実数」とは異なるものの、公演数・会場の規模からアーティストのライブ動員力を推し量る指標となっている。時代の変化とともに音楽配信やYouTubeなどの出現で、CDのヒットチャートだけでは人気を測ることが難しくなってきている昨今。「ライブにどれだけの数の観客を集めているのか」という視点から、アーティストの真の実力と人気に迫った。
ジャニーズ、LDH、K-POP…トップ10で存在感を増す3大勢力
動員数ランキング全体を見ると、近年の流れとして上位陣はドームやアリーナといった大規模会場を主戦場とすることで、動員数を伸ばす傾向が続いている。トップ10ではジャニーズが4組を占め、続いてEXILE TRIBEが所属する事務所LDHから2組、K‐POPグループが2組と続き、この3大勢力の強さを示している。ソロアーティストで唯一ランクインしたのは福山雅治。女性陣の中でトップを飾ったのはももいろクローバーZであった。
1位に輝いたEXILE TRIBEは今回調査したアーティストの中で唯一動員が100万人を超えた。EXILE TRIBEとは、EXILEを中心に三代目 J Soul Brothersなどから構成されている。春のツアーでは、2014年6月にさいたまスーパーアリーナで10日間連続公演を行い、同年末にも東京・大阪・埼玉・福岡・名古屋・札幌で開催されるドーム公演が控える。2014年8月にEXILE TRIBE名義で発売したシングル『THE REVOLUTION』は、初日に31万枚を売り上げるなど、破竹の勢いを続けている。
2位はSMAP。2013年は大型ツアーが組まれなかったが、2014年は9月から大規模な5大ドームツアーを開催。94万人を集め、2015年分も合わせると100万人を超える。また、2014年のツアーで回るドームの公演数は全19回と、調査したアーティストの中で最多を記録した。全公演においてゲストが中継出演し、歌ってほしい曲をリクエストする新しい試みも実施。北川景子や上戸彩など豪華な面々が登場した。
3位はBIGBANGの92万人。K‐POPグループの中でトップとなった。年始のドーム公演と、2014年2月に全国4カ所14公演行われたライブイベント、11月より東京・大阪・名古屋・福岡・札幌の5大ドームで行われたツアーで動員数を稼いだ。メンバーのD-LITEも6~7月にかけて、全国のアリーナクラスの会場を回り、41位にランクインしている。
・2014年1月1日~12月31日までの、主要アーティストの単独公演をピックアップ。各会場のチケットが完売したと仮定し、弊誌が設定した収容人数を合計して、ライブ総動員数とした。
・上記期間に開かれる有料の国内単独歌唱公演が対象(EXILE TRIBEについては、EXILE TRIBE名義でのCDが発売されているため、対象アーティストとしてカウントした)。複数アーティストが出演するイベントやフェス、握手会、学園祭などは除いた。
・9月下旬時点で公式発表されていない公演は含まない。
・動員数が同数の場合、100人単位で数値を比較した。
・公演数ランキングは公演数が同数の場合、同順位とした。
4位は嵐。2014年11月から始まった全国5大ドームツアーで89万人を動員する。ラストには12月19~23日まで続く、東京ドーム連続5日間公演が控えている。海外公演のためランキングには反映されてはいないが、結成15周年を記念して開催された、デビューの地ハワイでの3万人ライブも成功させ、勢いは増すばかりだ。
5位は78万人の関ジャニ∞。デビュー10周年を迎え、夏に東京・味の素スタジアムと大阪・ヤンマースタジアム長居で「十祭」というライブイベントを開催。2014年11月からはドームツアーを敢行している。
9位にランクインしたのは、ももいろクローバーZ。今回調査した女性アーティストのなかで、1位を記録した。現在日本で最大クラスの収容数といわれる日産スタジアムで2日間の公演を行うなど、ライブに定評があるアイドルゆえの結果を示したといえる。
欧米アーティストの来日当たり年だった2014年
海外のアーティストを見ると、欧米のアーティストランキングでは、結成52年目を迎えてなお精力的なザ・ローリング・ストーンズが、東京ドーム公演3日間で16万人を集めトップとなった。
2位にはこちらもデビュー50年を超えるエリック・クラプトンが9万人でランクイン。3位にはサラ・ブライトマンが続いた。
2014年は欧米の大御所アーティストが多くやって来た年といわれ、35年ぶりに来日公演を行ったボストンも5位に入った。また2014年3月に来日したボブ・ディランは、本人の希望で5都市17公演をすべてライブハウスで行うこだわりぶり。ポール・マッカートニーは2年連続で来日を果たしたが、体調不良のため公演は中止となった。
K-POPでは、BIGBANG、東方神起に続いて、EXOが31万人を動員し3位につけた。韓国では2012年にデビューしているが、日本では未デビューの男性グループ。さいたまスーパーアリーナで、1日2回公演を行うなど、既に日本でも人気に火が付いている。
2国間の政治問題などもあって一時期に比べると、下火のように思われがちなK-POPだが、動員数では相変わらずの強さを発揮した。コンサートプロモーターズ協会(ACPC)事務局長・今泉裕人氏も「K-POPの人気は一過性のものではなく、日本に定着した感がある。観客の年齢層が幅広いために、日本人アーティストが敬遠しがちな平日開催のドーム公演を行えることも彼らの強みのひとつ」と言う。
また、50歳以上のアーティストを対象にした、オーバー50アーティストランキングでは小田和正が27万人を動員し1位に。2014年6~10月にかけての3年ぶりの全国ツアーで、全体の動員数ランキングでも26位に入った。
2位はライブバンドとして名高いTHE ALFEE。デビュー40周年を記念して、春と夏に大規模なライブツアーを行い21万人の観客を集めた。2014年12月に行われる日本武道館公演は通算86回目となる。
3位に入った松田聖子も2014年がデビュー35周年のアニバーサリーイヤー。公演数も例年より多く、18万人を動員した。
キャリアアーティストの傾向としては、ドーム・アリーナクラスの会場を連発するわけではないが、全国の中小規模のホールを回ることで10万~20万人を集客している。「彼らが年間を通してがんばってくれるので、年配の方たちもライブに行くことが当たり前となってきている。そうした人たちに向けて、平日の早い時間帯にライブをスタートさせたり、公演時間も短く抑えるなど、公演形態にも工夫が凝らされるようになってきた」(今泉氏)。
AKB48グループが公演数では上位を占める
一方、公演数ランキング1位は316回のAKB48。2位は249回のHKT48、3位は207回のSKE48、4位205回のNMB48と、自らの劇場を持つAKB48グループの強みが発揮される結果となった。
5位は135回の氷川きよし。ソロアーティストで唯一100回を超える公演数。ほぼ1年間、公演で全国を回り続けるスタイルは健在だ。
公演数ランキングにおいて属性を見た際、アイドルが多いのは一目瞭然ではあるが、「オーバー50」のアーティストが多いことにも気付く。25組のうち6組のアーティストが50代を超えており、約4分の1を占める。先の今泉氏の発言の通り、彼らがいかにパワフルに活動しているかが分かる。
迫り来る2016年問題、閉鎖・改修が相次ぎ、関東は会場不足に
下のグラフのように、動員数と公演数は右肩上がりで2012年から2013年にかけても順調な伸びを示している。ただ、今後もこの勢いを保てるかどうかは、これから訪れる「会場不足問題」の早期解決にかかっている。
今、コンサート業界が直面している大きな問題のひとつが関東圏での会場不足問題。大規模会場でライブを行おうにも会場が足りていないのが現状だ。2014年5月に閉鎖された国立競技場に端を発したかのように、2015年以降も大型施設の建て直しや改修が続いていく。
まず2015年3月に、新国立競技場の予定敷地内にかかっている日本青年館が移転のため取り壊しが始まる。そして同年9月には、ロックの殿堂こと渋谷公会堂の閉館も決まっている(渋谷区役所などとあわせて2019年に新たに完成予定)。
2016年に入ると横浜アリーナが大幅改修のため1~6月末までの間が使えず、さいたまスーパーアリーナも2~3月にかけて改修期間となる予定。丸2カ月の間、関東圏で約2万~3万クラスの会場が2つとも使えないのは、アーティストにとっても悩みの種だ。
近いうちに改修に入るといわれているのが代々木第一体育館。改修か建て替えなのかがいまだ不明の日本武道館や中野サンプラザなど、問題は尽きない。
では、なぜこのように同じタイミングで会場の改修などが続くのか。そのキーワードは、やはり東京五輪。日本武道館や代々木第一体育館などは、前回開かれた1964年の東京五輪の際に建てられ、築50年が経過した。2020年の開催に向け、手を入れる必要があるのだ。
ただ、コンサート事業者側も黙って見ているだけではない。行政に対して新国立競技場をコンサートでも使いやすい造りにしてもらよう働きかけたり、東京都には2万人クラスのアリーナ施設を作ってもらえるよう要望書を出している。2014年10月に東京・豊洲に3000人収容のライブハウス「豊洲PIT」ができたのは朗報だが、まだまだこの先も会場不足問題には、頭を悩まさせられそうだ。
(ライター 中桐基善)
[日経エンタテインメント! 2014年12月号の記事を基に再構成]
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