女性同士のイヤな感じ、正体は「マウンティング」
格付けし合う女性達(1)
自分の立ち位置を確認したいその気持ちが格付けを生む
他愛もない女性同士の会話で、ふと感じるつかみどころのない"違和感のある物言い"にモヤモヤ……。会話を楽しみたいのに、なぜか心が疲れる。そんな経験を持つ人も少なくないのでは?
「もしかしたら、その正体はマウンティングかもしれません」。そう話すのは、"マウンティング女子"の名づけ親で漫画家の瀧波ユカリさん。「小さな優越感を感じたいために、自分のほうが上だとアピールする」マウンティングは、女性同士に起こりやすい現象だという。ジャーナリストの白河桃子さんは、その理由をこう分析する。
「社会的な地位や収入で単純に格付けが決まる男性と違い、女性は、結婚や出産、彼氏や仕事、美しさなど、いろんな"幸せ軸"が入り混じります。『あの人は課長だけれど、私は結婚して子どもがいて幸せ』というように、置かれた環境で価値観も変わるため、幸せの基準が曖昧で移ろいやすい。だからこそ、自分の立ち位置を常に確認しようと他人を格付けしたり、マウンティングで自分の幸せを相手に認めさせたりしたいのでしょう」
本来は、犬などの動物が自らの優位性を示すために、相手に馬乗りになる行為を指す。その様子が"自分のほうが幸せ"とアピールする女性間の人間関係に似ていると、漫画家の瀧波ユカリさんが表現。いじめなどの明らかな対立と異なり、ふとした言葉や態度がきっかけとなって、関係を壊さない程度に見栄を張り合う。沢尻エリカ主演のドラマ『ファースト・クラス』(フジテレビ系)で話題に。
また、根底には「自分への自信のなさがある」と瀧波さん。
「マウンティングをするのは、自分に自信がない証拠。会話のなかでコンプレックスを感じる事柄に触れたとき、"見下されたくない"という焦りから、勝てそうなカードを強引に出してくる。"私は不幸せじゃない"と自分を納得させているケースも」
小さな見栄やライバル心から、なんとなく張り合ってしまう。つい陥りがちな行動ともいえるが、度が過ぎると人付き合いがつらくなる原因にも。「純粋な会話が楽しめなくなったり、人付き合いがおっくうになったり。最悪の場合、相手との関係が修復できないほどこじれてしまいます。マウンティングをした側も、罪悪感から後悔したり、自分のことが嫌いになったりする。結局、誰もトクをしません」(瀧波さん)
心を乱す格付けモードに振り回されないためには、「曖昧な"幸せ"のカタチにこだわりすぎず、自分にとって"楽しい"という感情を大切に生きること」(白河さん)、「自分自身を肯定できるようになること」(瀧波さん)が大切。
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マウンティングしやすい人はこんな人
マウンティングをしがちな人は、"他人からどう見られるか"に敏感で、相手より優位に立ちたいタイプに多い。「分かりやすいのが、写真撮影のとき、1歩下がって小顔をアピールする人」(瀧波さん)。そのほか、上下関係をつけやすい2人組の関係を望みがち、自分の話ばかりする、などの特徴がある。
マウンティングする人はポジション取りが絶妙
集団のなかで"常に自分が優位に立てる場所"を目ざとく見つけてがっちりキープ。写真撮影では、顔が小さく見えるように1歩下がって小顔をアピール。人よりも下に見られることを何より嫌がる。
・2人組の友人関係をつくりたがる ・自分の話ばかりする
・他人へのチェックが厳しい ・"リア充"オーラが強い
この人たちに聞きました
漫画家。80年、北海道生まれ。04年に『臨死!!江古田ちゃん』でアフタヌーン四季賞大賞を受賞し、デビュー。著著は『女もたけなわ』(幻冬舎)ほか多数。14年2月に『女は笑顔で殴りあう マウンティング女子の実態』(犬山紙子さんとの共著/筑摩書房)を上梓。
白河桃子さん
東京都生まれ。少子化ジャーナリスト、作家、大学講師。「女性が輝く社会のあり方研究会」委員。著著に、20万部のベストセラーとなった山田昌弘氏との共著『「婚活」時代』(ディスカヴァー携書)、『格付けしあう女たち「女子カースト」の実態』(ポプラ新書)など。
(ライター 西尾英子)
[日経WOMAN2014年10月号の記事を基に再構成]
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