あなたはどれだけわかる? グラビア美少女の新潮流
日経エンタテインメント!
グラビアの黄金時代と言われた1990年代後半から2000年代前半にかけては、水着グラビアをきっかけにブレイクするタレントが次々に現れた。2000年代後半以降は、AKB48をはじめとした既に人気を獲得しているアイドルがグラビアに多数登場。だが最近改めて、新人タレントを積極的に起用する例が増えている。
ここ数年の雑誌界では、アイドルブームを起こしたAKB48グループが、水着グラビアも席巻し、グラビアがメーンのタレントは、活動の場が減少していた。しかし、2014年に入って、状況に変化の兆しが見られる。
上の表は、コンビニエンスストアに並ぶ主要コミック雑誌や情報誌の表紙に水着で登場した回数をタレント別にカウントしたランキング。2013年は柏木由紀、渡辺美優紀、小嶋陽菜ら5人のAKB48グループメンバーがベスト16に入っていた。だが2014年上半期は、プロポーションが良く写真集でも人気を集める山本彩が上位にランクインしている他は、AKB48グループ以外のタレントの躍進が目立つ。
ある芸能事務所関係者は「グラビアでも活躍していたAKB48の有力メンバーが卒業したことで、その席が空いて、他のタレントにもチャンスが出てきた」と語る。もちろん、AKB48グループの若手メンバーが空いた席に座る可能性もある。ただ、次世代エース候補は松井珠理奈、川栄李奈、小嶋真子など、グラビアがメインではないタイプが多く、グラビア系タレントには追い風となっている。
人気アイドル頼みの反動か、雑誌発の人気者を再び
2014年上半期の水着登場回数は、この1年で知名度を伸ばした星名美津紀とおのののか、10代前半から息の長い活躍を見せる篠崎愛らが上位となった。さらに、佐野ひなこや筧美和子ら新興戦力の急上昇も目立つ。一方、2013年のランクで上位だった杉原杏璃、吉木りさ、壇蜜は、グラビアをステップにテレビ番組中心の活動にシフトした。
ベテランの磯山さやか、喜屋武ちあき、原幹恵もランクインしているように「グラビアアイドルのファンは40代50代が多く、若さより安心感を求めている」(出版関係者)という声もある。だがAKB48が人気を集めて以降は、アイドルファンが低年齢化。その傾向がグラビアにも波及しており、新世代への期待感が強まっている。それが、10代の星名や佐野が人気上昇を見せた結果につながっていると思われる。
出版社と芸能事務所の両者から聞こえてくるのは「出版社が自前で人気タレントを育てたいという思いが改めて強くなっている」という声。AKB48など既に人気のタレントばかりを起用していては、グラビア展開の自由度が下がり、誌面がつまらなくなる。新顔でも有望であれば、表紙や巻頭グラビアに積極的に起用している背景には、人気アイドルに頼りすぎた反動もあるようだ。こうした機運のなか、水着グラビア発の新世代タレントが目立ち始めたと言える。
1990年代から2000年代の水着グラビアアイドルの黄金時代には、小倉優子、ほしのあき、熊田曜子らがバラエティーでも活躍して、シーンを引っ張った。グラビア界が本格的に盛り上がるには、キャラクターが立った代表格が知名度を上げて、シーン全体に目を向けさせることが必要。今後、その役割を果たしそうなタレントが次々に登場している。
バラエティーからドラマまで
2013年ごろからバラエティー番組出演が急増しているのが小島瑠璃子。「2014年上半期タレント番組出演本数ランキング」(ニホンモニター調べ)では201番組で、大久保佳代子、近藤春菜に次ぐ女性3位だった。安定したMC(司会進行)力と、ワイプで抜かれたときのナチュラルなリアクションが、強みと言える。
同じく、バラエティーでの活躍が目立ち始めているのがおのののか。球場でビールの売り子をしていたというユニークな経歴と芸名のインパクトでも注目を集めている。
2014年7月期の連ドラでレギュラー出演しているのが、『テラスハウス』(フジ系)で脚光を浴び、抜群のプロポーションを生かした篠山紀信撮影の写真集もヒットした筧美和子と雑誌『ヤングマガジン』(講談社)の水着グラビアから人気に火が付いた佐野ひなこ。2人は『水球ヤンキース』(フジ系)に出演中。女子水球部員という役柄もあって、グラビアで活躍する若手が抜てきされた形だ。
グラマラスな正統派として期待を集めるのが高崎聖子(しょうこ)。2014年4月からは、『オレたちゴチャ・まぜっ!』(MBSラジオ)に、手島優、中村アン、篠崎愛らを輩出した「ヤンヤンガールズ」の一員として出演中だ。
彼女たちに共通するのは、『JJ』(光文社)専属モデルの筧、読者モデル出身の佐野を筆頭に、洗練された美形のルックスと好感度の高いキャラクターから、女性の支持も集めているという点だ。
従来の人気グラビアアイドルは、「水着=男性人気」というイメージが強すぎて、有名企業はCMへの起用を敬遠する傾向があった。しかし、佐野が日本コカ・コーラ「ジョージア」のCMに出演するなど、潮目は変わりつつある。グラビア界の新戦力たちは、女性層への支持の広がりをバックに、さらに幅広い活躍を見せそうだ。
アイドルが自ら始めた、新潮流として注目を集めているのが、スマートフォンで自分自身を撮った写真をツイッターにアップする「グラドル自画撮り部」だ。
中心人物は22歳の倉持由香。2013年ごろから鏡で自身の水着姿を撮影し、ツイッターでアップしたところ徐々に話題になり始めた。2014年1月から同じ事務所の吉田早希たちと「グラドル自画撮り部」を結成。ツイッター上で共通の話題を扱う際に用いられるハッシュタグをつけ「#グラドル自画撮り部」として画像をアップし続けたところ一気に注目度が上がった。
さらに、他のグラビアアイドルも同様のハッシュタグをつけて次々に水着の自画撮り写真をアップ。現在では約400人のアイドルが参加していると言われる。
「グラビアアイドルが活躍する媒体が減るなか、タレント同士が協力し合いひとつの媒体として成立させたことが画期的だった」とある出版関係者は指摘する。
「最初はDVDが売れなくなるからと事務所のスタッフさんにも反対されました」と倉持は話す。しかし肝心の知名度が不足していると、DVDを発売していることさえユーザーにリーチしないと、事務所の反対を押し切る形で自らプロモーションを進めた。結果、2014年5月には、キャリア10年目にして初写真集となる『#東京尻百景』(双葉社)の発売にもつながった。
ネット上に魅力的な画像が広がったことでブレイクした例といえば、2013年、「1000年に1人の美少女」として話題になった、Rev.from DVL.の橋本環奈も同様だ。写真一枚一枚の良さで勝負するグラビアアイドルにとっては、SNS(交流サイト)は大きな武器になる。それに気がついたのがグラビアアイドル自身だったことは、タレントによるセルフプロデュースの重要性を示している例と言えそうだ。
1980年代以降、人気のタレントを多数生んできたのが、出版社によるコンテスト。2010年代に入り、「ミスマガジン」(講談社)、「グラビアJAPAN」(集英社)などの有力ミスコンが休止状態になるなど下火になっていた。しかし、これまでのミスコンとはアプローチを変えた取り組みで注目度が高まっているのが、講談社が主催する「ミスiD(アイドル)」だ。
これまでの男性目線でのビジュアル的な魅力だけではなく、人間としての内面や女性にも共感を持たれるような女の子にもスポットを当てているのが、これまでのコンテストと大きく異なる点だ。
実際、2012年に開催された第1回となる「ミスiD2013」のグランプリに輝いた玉城ティナは、その後、『ViVi』(講談社)のモデルとなり史上最年少で表紙を飾った。「ミスiD2014」のグランプリである青波純(その後、蒼波純に改名)は、個性派女優としての道を歩みつつある。グランプリ以外の受賞者も、ソロアイドルとして活躍する寺嶋由芙、レイチェルなど、幅広いキャラクターの女の子が選出されている。
交流の様子も審査対象
「新しいコンテストを立ち上げるに当たり、アイドルの定義を改めて考えたとき、『アイドルはロールモデル』というキーワードが浮かんだ。何か1点に秀でていれば、例えば引きこもりであっても、タトゥーが入っていても、女の子はみんな誰かにとってのアイドルになれるのではと考えた」と実行委員長を務める『フライデー』副編集長の小林司氏は解説する。
このため、選考には今までにない視点が持ち込まれている。50人前後のセミファイナリストに残った段階で参加者は、最近多い有料チャットなどではなく、ツイッターや同賞のサイトで一般のユーザーと無料の交流を始める。その受け答えも審査の対象になる。
最終的には、一般ユーザーからの投票も踏まえたうえで、審査員が協議して受賞者を決める。でんぱ組.incプロデューサーのもふくちゃんやテレビ東京の佐久間宣行プロデューサーなど、審査員の顔ぶれが個性的なことも話題を呼んでいる理由だ。「SNSで発信力のある方に審査員をお願いしていることで、その方に共感し、初めてミスコンを受けるという女の子が圧倒的に多い」(小林氏)ことも、新たな魅力を持つ女の子の発掘につながっている。
第1回の応募数は500人前後だったが、第2回は2500人を超え、今回の「ミスiD2015」では約4000人に達した。
さらに2014年は、水着グラビア展開ができる参加者に、小林氏自身は改めて注目していると言う。「グラビア界は世代交代期に差し掛かっている。ブーム時ほどの影響力はないものの、全くの新人が有力誌の表紙に登場したり、巻頭カラーで4ページも掲載できるのはグラビア以外にない。飛躍のチャンスがあるのは確か」(小林氏)。ここ2年で培ったミスiDらしい視点が、水着グラビアに持ち込まれることで、これまでにない意外性のあるグラビア出身のタレントが生まれるかもしれない。
(ライター 高倉文紀、日経エンタテインメント! 上原太郎)
[日経エンタテインメント! 2014年9月号の記事を基に再構成]
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