連載小説 赤神諒「太陽の門」2月21日スタート
2月21日から新しい連載小説「太陽の門」(赤神諒作、安藤巨樹挿絵)を掲載します。
赤神氏は1972年京都市生まれ。2017年に九州・豊後の戦国大名のお家騒動を描いた「義と愛と」(単行本化に際し「大友二階崩れ」に改題)で第9回日経小説大賞を受賞しデビュー。その後も戦国大名や武将が主人公の歴史小説を発表している新進気鋭の作家です。
「太陽の門」の主人公は、スペイン内戦で一般市民側に加わり軍部に抵抗した米国人の義勇兵。映画「カサブランカ」の主人公がかつて義勇兵だったという設定から作者が着想した物語です。外国人の主人公を通して、常に劣勢でも誇りを失わないスペインの市民たちが何を求めて戦っていたかに迫ります。
挿絵は映画のワンシーンのような風景画、人物画を得意とするイラストレーターの安藤巨樹(なおき)氏が担当します。
〈作者の言葉〉
映画史上に燦然(さんぜん)と輝く名作「カサブランカ」。
役者、脚本、音楽、さらに時代が生み出した奇跡の傑作を、私は何度見返したか知れません。若かりし日、ハンフリー・ボガート演じるリックに憧れ、渋すぎる彼の生き方を真似(まね)しようとしたのは、私だけでしょうか。
作中では、リックがパリでイルザと出会う前に、スペイン内戦(1936年7月~39年3月)で、義勇兵として共和国(人民戦線)側で戦っていた事実が明らかにされています。
自由と民主を守るために、ごく普通の一般市民が銃を取って立ち上がり、そして敗れた悲劇の戦争は、ピカソの「ゲルニカ」をも産みました。リックはあの戦争にどう関わり、いかなる思いを抱いたのか。
どうしても知りたくなったので、前日譚(たん)を書くことにしました。
3年弱続いたスペイン戦争の後、欧州全土にファシズムの嵐が吹き荒れました。マドリード陥落からパリ陥落まで、約1年です。
世界は今も平和まで辿(たど)り着けませんが、この小説は、日本人が当然のように謳歌してきた〈自由と民主主義〉のかけがえのない価値を、歴史を通じて見つめ直すささやかな試みでもあります。