医療機器、欧米大手を追う キヤノンが東芝子会社買収
キヤノンによる東芝メディカルシステムズ買収は、日本の医療機器産業が持ち前の技術力に規模も併せ持つ段階に入ることを意味する。キヤノンは医療関連で売上高5千億円規模と国内トップ級に躍り出る。富士フイルムホールディングス(HD)もM&A(合併・買収)に積極的だ。拡大する世界の医療機器市場で欧米勢に挑む条件が整いつつある。

日本勢は内視鏡など一部製品を除き、世界シェアでは欧米の医療機器大手に水をあけられていた。だが、先端医療機器に不可欠な精密加工、光学、エレクトロニクス分野で日本は高い技術を持つ。シェアが低い分、伸び代が大きいといえる。
医療部門の年間売上高が数百億円とみられるキヤノンが巨額買収に踏み出した背景にもそうした計算がある。東芝メディカルはコンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)など画像診断装置を得意とする。キヤノンは眼底カメラとX線デジタル撮影装置が主力だ。
キヤノンは事業規模拡大だけでなく、新たな機器の実用化に取り組む。画像診断分野にデジタルカメラで培った得意の光学技術を適用した装置を開発する。現在は持っていないMRIでは京大と価格を従来の1割程度に抑える新技術を生み出しており、東芝メディカル製の機器に適用できないか模索するとみられる。
一方、欧米大手はモノのインターネット化(IoT)時代をにらみ、サービスに軸足を置いて事業モデルを転換し始めている。オランダのフィリップスは患者が診療データをどこでも見られるサービスを開始。患者と医療機関を結び、医師側も病理データに基づいて診療できるようにする。独シーメンスは医療機器部門を独立させM&Aに動きやすい態勢を整えた。
先進国の高齢化や新興国の経済成長で医療機器の世界市場規模は2013年に40兆円に迫り、18年には50兆円を超えるとの試算もある。欧米大手は医療機器部門だけで売上高1兆円を超す企業も多い。日本勢は巨大で高いシェアを握る欧米勢とどう戦うかを問われる。
富士フイルムHDは内視鏡やX線デジタル撮影装置に強く、ヘルスケア部門の売上高は約4千億円。18年度までに1兆円に引き上げる目標を掲げる。東芝メディカルは逃したが、資金に余裕があり、別のM&A案件を探ることになりそうだ。
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