バフェット氏「失敗した」 アマゾン投資機会逃し後悔
86歳、今年も質疑応答6時間
【オマハ〈ネブラスカ州〉=山下晃】「(IBMの投資は)間違っていた」。米著名投資家ウォーレン・バフェット氏(86)は6日、同氏が率いる投資会社の株主総会でIBMへの投資を悔やんだ。一方で、足元で投資規模を増やしたアップルは「消費者向け企業」として捉えて評価。アマゾン・ドット・コムの経営を評価するなどテクノロジー企業への言及が目立った。

バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイは毎年、本社所在地でありバフェット氏の生活拠点であるネブラスカ州オマハで定時株主総会を開く。今年も長時間にわたる質疑応答の場で「賢人」と呼ばれる著名投資家の話を直接聞こうとオマハの地にはおよそ4万人の株主が集まった。
「投資していた6年間では当初思っていたようにはならなかった」。バフェット氏は2011年から投資を継続してきたIBM株のおよそ保有分の3分の1を売却。想定通りの結果で推移していないことを認めた。当時は力強い株主還元政策を評価していたが、IBMは減収が続いており、バフェット氏はおおよそ平均取得価格付近で一部を売却したと見られる。
IT(情報技術)・ハイテク分野の投資を避けてきた同氏が2011年にIBMへ投資を始めた当時は驚きを持って受けとめられた。それまでバフェット氏はテクノロジー分野への投資は「得意ではない」と避けてきたからだ。
IBM株については圧縮を迫られたがバフェット氏がITハイテク分野から再び遠ざかるわけではない。バークシャーはアップル株を今年になって大幅に買い増し約180億ドルを保有している。「IBMとアップルは評価の仕方が異なる」とバフェット氏は指摘。アップルは「消費者の企業」で、顧客の定着性が高く、コカ・コーラのような企業に育つと見ている。
一方でIBMのクラウド分野のライバルとして立ちはだかったアマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾス氏を称賛し、投資してこなかったことを悔やんだ。「人に質問をするなどいろんな方法で自分の幅を広げることができたはずだ。(アマゾンなどへの投資機会を逃し)失敗した」と述べた。
バフェット氏とともに壇上で質問に答えていた盟友のチャーリー・マンガー副会長も「我々はグーグルを理解できるほど賢いはずだった」とグーグルの親会社アルファベットへの投資をしていないことに悔しさもにじませた。
バフェット氏は「企業が大きく稼ぎ成長するには投資が必要だったが、今や大規模な資本は必要ない」と指摘。IT業界への投資尺度は「(従来と)全く違う世界だ」と述べていた。同氏の今後のハイテク分野への投資には一段と注目が集まりそうだ。
バフェット氏は86歳と高齢ながら、時折好物のチェリーコークに手を伸ばし6時間近い長丁場を取り仕切った。

著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米バークシャー・ハザウェイの投資動向や解説、同氏に学ぶ投資術に関する記事をまとめました。
ウォーレン・バフェット氏(Warren Buffett) 1930年、米中西部ネブラスカ州のオマハに生まれる。6歳からガムを売り歩き、11歳で株式投資を始めた。「割安株投資の父」ベンジャミン・グレアム氏に感化されて投資家の道を志す。1965年に繊維会社だったバークシャー・ハザウェイの経営権を握り、同社を母体に投資や事業投資を展開して財を築いた。優良銘柄を本質的価値より低い価格で買う投資スタイルで知られ、「オマハの賢人」との異名を持つ。大富豪ながら質素な生活で知られ、コーラとハンバーガーを好む。