クリントン氏、米大統領選候補に有力 バイデン氏不出馬
【ワシントン=吉野直也】来年11月の米大統領選へのバイデン米副大統領(72)の不出馬により、民主党はヒラリー・クリントン前国務長官(67)の候補指名が有力になった。同じ中道で支持層が重なるバイデン氏の支持層の獲得を期待できるためだ。一方、バイデン氏はクリントン氏の環太平洋経済連携協定(TPP)への不支持表明を批判した。
バイデン氏は21日の記者会見で、次期大統領選に関して「(大統領に立候補するための)窓は閉じられた」と述べ、不出馬を明言した。5月に長男を亡くしたことに言及。精神面を含めた態勢作りが遅れ「指名を獲得するのに必要な時間がなくなった」と説明した。ヒラリー氏のTPP不支持を念頭に「大統領のレガシー(遺産)を覆すのは悲劇的間違いだ。民主党員は業績を守るべきだ」と非難した。
記者会見はホワイトハウスの中庭であるローズガーデンで開いた。ジル夫人とオバマ大統領が付き添った。クリントン氏は長官時代に私用メールアドレスを使った問題で一時60%を超えていた支持率が40%余りに下がった。これに伴いバイデン氏の出馬論が高まっていたが、今月13日の第1回テレビ討論会でクリントン氏が安定感を示し、支持率低下に歯止めが掛かった。この点もバイデン氏の判断に影響したとみられる。
バイデン氏の不出馬により、クリントン氏の支持率は10ポイント程度上昇するとの予想がある。クリントン氏は声明でバイデン氏について「良い友人であり、偉大な人物だ。楽天主義、世の中をより良くする決意にいつも感銘を受けている。彼はこれからも最前線で戦い続けるだろう」とたたえた。
民主党の候補指名争いは、バーニー・サンダース上院議員(74)らが参加するが、クリントン氏の優位は動かない。共和党で支持率首位に立つ不動産王ドナルド・トランプ氏(69)はツイッターで「バイデン氏は正しい決断をした。私はクリントン氏のほうが戦いやすい。彼女の実績がひどいからだ」と述べた。