EU、難民割当制を再協議 16万人受け入れを検討
【ブリュッセル=森本学】中東やアフリカから欧州を目指す移民・難民が急増している問題を受け、欧州連合(EU)は加盟国に難民受け入れの分担を義務付ける割当制度を再協議する。欧州委員会は5月、今後2年間で計4万人を分担して受け入れることを義務付ける制度を加盟国に提案したが、反発が強く、自主的な受け入れに後退していた。受け入れ目標も4倍の16万人に引き上げることを検討する。
EUは5日、ルクセンブルクで開いた非公式の外相理事会で、難民問題への対応を協議した。シリア内戦など難民発生の根本原因に連携して対処する方針で一致した。難民の受け入れ分担の義務化も協議したもようだ。メルケル独首相とオランド仏大統領も3日、義務化を目指すことで一致していた。
欧州には今年に入り地中海を渡って36万人超の難民・移民が流入している。外相理事会終了後の記者会見でEUのモゲリーニ外交安全保障上級代表は「一部は経済的な移民だが大半は難民だ」と指摘。EUの域内への定住を受け入れる必要があるとの認識を表明した。
【受け入れの分担】 | ← | 東欧など義務化に反発 |
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○難民の受け入れ分担を義務化 ・現在は自主的な受け入れ分担で対応 | ||
○EU全体の受け入れ目標を大幅引き上げ ・現在の4万人→16万人に引き上げへ |
難民受け入れを巡っては、欧州委が5月、加盟国ごとに経済規模などに応じた義務的な受け入れ枠を配分する割当制度を提案した。しかし、難民の受け入れ実績の少ない東欧やバルト諸国を中心に加盟国の反発が強く、自主的な受け入れに転換。6月のEU首脳会議で、今後2年間でイタリアやギリシャに到着する4万人の難民の受け入れを目指すことで一致した。
ただ夏以降、さらに難民流入が急増し、問題が深
【流入の抑制】 |
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○難民認定を迅速化し、受け入れ対象を絞り込み ・EU主導の認定センターをギリシャ、イタリアなどに設置 ・経済的な理由による移民は本国へ送還 |
○安全国リストの作成 ・難民として欧州に渡る必要のない出身国リストを作成 |
○密航船、密入国の仲介業者の摘発強化 |
刻化していることから、欧州委は義務的な割当制度を再提案する方向で検討する。新たにハンガリーに到着する難民の受け入れ分担も加え、受け入れ目標を従来の4倍の16万人に増やすよう追加提案する方針。欧州委のユンケル委員長が9日の欧州議会での一般教書演説で、新たな割当案を盛り込んだ難民対策を表明する。
受け入れる難民を抑制するための対策も強化する。EUは欧州入りする移民・難民のうち、人道的に保護が必要だと認定する難民は受け入れに応じる一方、経済的な理由で欧州を目指す移民は本国へ送還する方針だ。難民かどうかを迅速に判断する態勢の整備を急ぐ。
送還しても安全な出身国リストを作成するとともに、多数の難民が欧州入りする"玄関"となっているギリシャやイタリアに、EU主導で難民申請を処理する受け入れセンターを整備することを検討する。
EUでは14日にブリュッセルで開く緊急の内相・法相理事会で、ユンケル委員長の提案を議論する見込み。10月中旬のEU首脳会議での正式決定を目指す構えだ。