国債保有、日銀が3分の1超す 買い取り限界論も
日銀による国債の保有残高が全体の3分の1を超えた。2013年4月からの日銀の異次元緩和で大量の国債を市場から買い取るためだ。ただ市場の国債需給は引き締まり、幅広い年限の国債で利回りが急低下するなど相場が変動しやすくなっている。購入拡大を限界とする声もあり、緩和政策による景気下支え効果を危ぶむ見方も出てきた。
日銀が17日発表した1~3月の資金循環統計(速報)によると、16年3月末時点の日銀の国債等保有残高は前年比32.7%増の364兆円。残高全体に占める割合は33.9%と過去最高となった。黒田東彦総裁のもとで大規模緩和を始める直前の13年3月末は13%。15年9月末に30%台に乗せたあとも伸びている。
日銀によると、10日時点の残高は373兆円。比率はさらに上昇しているとみられ、SMBC日興証券の末沢豪謙氏は18年中に50%に到達すると試算する。
大量購入とマイナス金利政策で、国債が一段と買われ、価格が上昇(利回りが低下)した。新発10年物国債の利回りはマイナス圏に低下。英国の欧州連合(EU)離脱懸念が安全資産とされる日本国債買いにつながる流れもあり、17日は40年物国債の利回りが一時0.195%と過去最低水準に下がった。
日銀執行部も気をもむ。中曽宏副総裁は9日の記者会見で、大量の国債購入で「流動性が低下している」と発言。市場の安定に配慮して金融政策を進める考えを示した。
米国の中央銀行にあたる米連邦準備理事会(FRB)の米国債保有残高は3月末時点で2.4兆ドル(270兆円程度)。残高全体に対する割合は「日銀の資金循環統計に近い枠組みで計算すると12.8%」(末沢氏)という。
FRBはリーマン・ショック後の景気後退に備え大規模緩和を実施したが、出口戦略を見据え、昨年12月には利上げに踏み切った。大規模緩和から抜け出せない日本とは対照的だ。
限界論もささやかれる。日銀は長期国債の保有残高が年約80兆円増えるペースで市場から購入し続ける方針だが、国の発行予定額や民間の保有量からみて買い入れには限界がある。「日銀がさらなる追加金融緩和で国債購入を増やせば、さすがに『それで打ち止め』と市場はみる」(国内証券)との声もあがる。
市場関係者の間では、日銀は上場投資信託(ETF)の購入枠拡大に向かうとの見方も強い。マイナス金利政策も、三菱東京UFJ銀行が国債入札の特別資格返上に動く。マイナス金利幅の拡大には銀行業界が反発する可能性が高い。