阿蘇大橋、再建に数年 別ルート検討へ
熊本地震で崩落した阿蘇大橋(熊本県南阿蘇村)の復旧作業の長期化が避けられない状況となっている。住民生活と観光振興に不可欠な橋で、地元は早期の再建を願うが、活断層対策など高度な技術が求められるため、元の場所に架けるのは難しいという。県に代わって国が直接再建に乗り出すものの、数年がかりの事業になりそうだ。
「通れなくなって初めて地域の命綱だったと気付いた。こんな姿になってショックだ」。幼少期を南阿蘇村で過ごした熊本市の会社員、北迫あすかさん(32)は橋を訪れ、無残な現場にぼうぜんとした様子だった。
阿蘇大橋は1971年に開通し、長さ約200メートル。九州中央部を貫く国道57号と南阿蘇村を結ぶ交通の要所。年間1800万人が訪れる観光地・阿蘇へ熊本市側から入る玄関口の役割も果たす。
4月16日未明に起きた「本震」で国道57号側の斜面の土砂が崩れ、阿蘇大橋一帯をのみ込んだ。崩れた土砂は長さ約700メートル、幅約200メートル。量は約50万立方メートルと推定され、東京ドームの体積の約4割に相当する。
斜面上部に多数の亀裂が見つかっており、崩れ切っていない土砂が相当残っているとみられる。阿蘇大橋を含む国道325号は熊本県の管理だが、国交省は県の要望を受けて道路法に基づく復旧の代行を決めた。
国交省は、斜面の下に長さ300メートルの壁を設置。斜面に残った土砂を取り除いていく方針で、無線で操作できる重機を投入して作業用の道路などを整備している。国交省幹部は「同じ場所に架けることはできない。復旧には数年かかる」としており、代替ルートが検討される公算が大きい。
他の橋やトンネルも大きな被害を受けており、南阿蘇村によると、以前より1時間近く遠回りしなければならない地区もある。担当者は「国は急いで代替ルートを確保してほしい」と訴えた。〔共同〕