不正と不信 底知れず 杭打ち改ざん、別業者でも
杭(くい)打ち工事のデータ改ざんを巡って13日、別業者による新たな改ざんが明らかになり、問題は底なしの様相を見せ始めた。旭化成建材が同日公表した調査結果でも、依然600件以上で改ざんの有無が確認できていない。安全確認作業に追われる自治体からは改めて不信の声が上がった。
新たに改ざんが判明した「ジャパンパイル」。ホームページの会社案内には「総合的な杭基礎建設会社」「建物基礎は目に見えない地下を対象とする工事だけに経験が重要」などの文言が並ぶ。
東京・日本橋浜町の本社ビルは夜になっても多くの窓に明かりがついたまま。午後9時すぎ、広報担当者がおわびの文書を配布したが、詳細については「分からない」と繰り返した。
多くの社員が言葉少なに立ち去る中、30代の男性社員は「ニュースでしか内容を知らず、会社からは何も聞かされていない。まさかウチでもあったとは……」とショックを隠せない様子だった。
一方、午後6時からの旭化成側の記者会見では、旭化成建材の前田富弘社長と旭化成の平居正仁副社長らが「みなさまに迷惑と心配をかけ、心よりおわび申し上げます」と改めて頭を下げた。
全国で266件見つかった改ざんを巡り、企業風土などを問う質問が相次いだが、平居副社長は「外部調査委員会が調査しているのでコメントは控えたい」と繰り返し述べるにとどまった。
旭化成建材が杭打ちを手掛けた3040件のうち、これまでに調査が終わったのは2376件どまり。同社は早急に確認を進めるとしているが、収束どころか業界全体への拡大の可能性も出てきた展開に、自治体からは改めて不信と憤りの声が上がった。
「きょうの旭化成建材の記者会見がひとつの節目になると思っていたが、これで収拾のメドが付かなくなった」。東京都都市整備局の担当者は、別業者でも改ざんが見つかったことにため息をついた。
東京都は旭化成建材の改ざん件数が全国最多の51件に上ることが判明。担当者は「都民の安全を考えると本当に残念。旭化成建材には早急に物件リストを提供してもらいたい」と話した。
改ざんが埼玉と並んで全国で3番目に多い26件だった北海道。千歳市建築課は「ある程度予想はしていたが、こんなにデータ流用があったのかと驚いている。他の業者でも発覚したとの報道があり、今後どうやって調査していけばいいのか」と頭を抱えた。
釧路市建築課の担当者は「杭打ちを手掛ける業者は全国にたくさんある。まだまだ影響は拡大するのではないか。着実に調査を進めたい」。紋別市の都市建築課も「請け負ったからには責任を持って工事してほしい」と訴えた。