7月1日に「うるう秒」 東証などトラブル警戒
今年7月1日は午前8時59分59秒と9時00分00秒の間に「59分60秒」が挿入される。地球の自転などに基づく「天文時」と原子時計に基づく「原子時」のわずかなずれを修正する「うるう秒」だ。たかが1秒、されど1秒。高度なコンピューター社会では思いも寄らないトラブルを起こすことがあり、関係機関は対策を進めている。
かつては天文時が使われていたが、1958年以降は原子時が世界標準になった。72年に始まったうるう秒は数年に1度挿入され、今回は3年ぶり26回目となる。
「この1秒の準備に半年を費やす」。日本の標準時を管理する情報通信研究機構(NICT)の担当者は真剣な表情だ。1月以降、事業者への説明会や機器のチェック態勢、広報対応などの準備に追われる。
以前、うるう秒はあまり問題視されなかった。だが、近年のコンピューターの進化で1秒当たりの処理能力が高まった上、ネットワークの発達によって多くの機器が相互接続され、企業などの大規模なシステムへの影響が懸念されるようになった。
実際、前回の2012年にはオーストラリアのカンタス航空で機器トラブルが起き、国内発着便に最大2時間以上の遅れが生じた。日本でも交流サイト(SNS)のミクシィで約4時間、サービスがつながりにくくなった。システムがうるう秒を処理しきれずに負荷が高まったためだという。
今年7月1日は水曜日で、平日のうるう秒挿入は18年ぶり。万一トラブルになれば影響が拡大する可能性がある。
午前9時に取引開始の東京証券取引所では、突然1秒が挿入されないように、1秒を午前7時からの2時間(7200秒)に"分散"して調整する。取引に大きな影響はない見込みだが、千分の1秒単位で注文が飛び交うだけに、東証は3月、関係先に留意事項の文書を通知した。
立命館大の上原哲太郎教授(情報セキュリティー)は「うるう秒でトラブルが起きる可能性はゼロではないが、かなりレアケース。最大の被害はこの1秒のために多くのシステム担当者が準備に追われることだ」と話している。〔共同〕