鳥獣戯画、絵順入れ替わる? はけ跡から判明
京都市の高山寺に伝わる国宝絵巻「鳥獣人物戯画」(平安~鎌倉時代、甲乙丙丁の4巻)の甲巻について、絵順の入れ替わりが和紙に付いたはけ跡から裏付けられたことが、2日分かった。このほど出版された修理報告書「鳥獣戯画 修理から見えてきた世界」(京都国立博物館編)で明らかにされた。
従来、絵に連続性がない箇所があることから入れ替わりは指摘されていたが、和紙の調査でも確認され、よく分かっていない制作当初の姿を知る手掛かりとなりそうだ。
23枚の和紙をつなげた甲巻は擬人化された動物が描かれた代表作で、長さ約11メートル。2009年からの修復の際、光で透かして紙の特徴を観察する透過光調査により、23枚目と11枚目は、製紙工程ではけを使って和紙をなでた際に付いた筋の跡がつながることが判明。法会の場面とされ、お礼の品を運ぶカエルがいる23枚目の後に、僧侶姿の猿に鹿を貢ぐウサギが描かれた11枚目が続く構図だったことになる。
11~15枚目は紙の継ぎ目に絵があり、入れ替わりはないとみられることから23枚目の後に続いていたことになるという。
11枚目と23枚目を合わせた長さは約54センチで、甲巻のほかの紙のサイズとほぼ同じことから、2枚は当初1枚だったが、切断され、絵順も入れ替わったらしいが、その時期は不明という。
修理を監督した一人の鬼原俊枝・元京都国立博物館列品管理室長は「他の場面が外れていた時期があり、絵順がつかめず、間違ったのかも」としている。
さらに甲巻は画風の違いから、1~10枚目、11~23枚目の2巻に分かれると考えられていたが、2巻は紙質も異なることが確認され、甲巻は2巻を合体して成立した可能性が高くなった。
甲巻は、1~10枚目の巻と、16~23枚目の後に11~15枚目が続く巻だったとの説がある。
鬼原元室長は「4巻を同時に調査し、各巻を比較できたことで、新発見が相次いだ。謎の多い鳥獣戯画の研究にとって重要な資料といえる。修復に当たった装●師(●はさんずいに黄、そうこうし)の観察力や、透過光などによる調査の成果といえ、今後の同様な絵巻物修理の指針となる」としている。〔共同〕