4月の実質賃金0.1%増、2年ぶり上昇 賃上げが寄与
厚生労働省が2日発表した4月の毎月勤労統計調査(速報値)によると物価変動の影響を除いた実質賃金の指数は前年同月比で0.1%上昇した。上昇は2年ぶり。名目の物価を押し上げた2014年4月の消費増税から1年がたち統計上の影響がほぼ消えたほか、企業業績の改善や人手不足による賃上げも寄与した。家計の実感に近い実質賃金が上向き始めたことは個人消費の追い風となりそうだ。
調査は、5人以上の事業所が対象。実質賃金は名目の賃金指数を消費者物価指数(CPI)で割ってはじく。プラスなら物価上昇を超えるペースで収入が増えていることを示す。3月は2.7%のマイナスだった。
実質賃金が急浮上したのは、消費税率が昨年4月に5%から8%へと引き上げられた影響がはげ落ち、前年比でみた物価への影響が中立になったことが大きい。
加えて電機、自動車といった分野で大手企業が相次ぎ過去最高益を更新するなどの好業績を背景に、賃金水準を底上げするベースアップ(ベア)も広がった。サービス業を中心とする人手不足も手伝い、賃金の伸び率が物価の上昇率を上回った。
賃金の名目値を示す1人当たりの現金給与総額は、前年同月比0.9%増の27万4577円だった。業種では、学術研究等が8.2%増と最も高い伸びを示した。不動産・物品賃貸業(5.7%増)や電気・ガス業(5.3%増)、金融・保険業(2.9%増)も増加した。一方、雇用者数が多い製造業は0.5%減とマイナスだった。
基本給を示す「所定内給与」も0.6%増の24万3293円。ボーナスなど「特別に支払われた給与」は1万1201円で14.9%増えた。
賃金は目先、強含みで推移しそうだ。4月の失業率は3.3%と18年ぶりの低さ。労働市場は引き締まり、人手を確保したい企業が賃金を増やす動きが広がっている。
経団連がまとめた15年の春季労使交渉の1次集計でも、ベアと定期昇給をあわせた賃上げ率は2.59%。この分は5月以降の賃金に本格的に反映される見通しだ。バークレイズ証券の森田京平チーフエコノミストは「ベアの効果が行きわたるのは7月で、実質賃金の上昇は続く」とみる。
ただ実質賃金が今後も上向き続けるかは、物価次第だ。2日に1ドル=125円台を付けた円安が一段と進めば輸入品の価格が上昇し、物価全体に波及しかねない。実質賃金を押し下げる要因となり、可処分所得が減った家計が節約に動く可能性もある。
毎月勤労統計は、速報値では数字が高めに出る傾向がある。正社員に比べ収入が少ないパート労働者の比率が少ないためで、今月中旬に発表する確報値がやや下振れするとの見方もある。