羽田から変わる東京 JR東、都心と結ぶ新線構想
五輪へ部分開業を検討
東日本旅客鉄道(JR東日本)は19日、東京や新宿など東京都心と羽田空港を結ぶ新線構想を発表した。都心の主要駅からの所要時間を約半分に短縮、2020年の東京五輪開催までに一部ルートの先行開業を目指す。五輪までのインフラ整備では東京急行電鉄と京浜急行電鉄の蒲田駅を結ぶ計画も浮上。品川駅の大規模再開発も進む。訪日外国人2千万人という政府目標達成に向けて羽田を核にしたインフラ整備が加速してきた。
新線の「羽田空港アクセス線」は3ルートからなる。発着駅は東京、新宿、新木場で、それぞれ乗り換えなしで羽田と結ぶ。羽田までの所要時間は東京の場合、現在の28~33分が約18分、新宿からは41~46分が約23分、新木場からは41分から約20分に短縮される見通し。開通すれば輸送力は8割増える。
完成は20年代半ばだが、未使用のトンネルなど既存設備が活用できる新木場からのルートで五輪までに先行開業を検討する。ただ羽田国内線ターミナルまでの開通は難しい。このため約1キロメートル手前に仮設駅を設け、同駅からバスなどで空港に輸送する。総事業費は3200億円で、負担額については国や東京都、JR東日本が今後詰める。
羽田の国際線発着枠は20年までに現在の年9万回から13万回に増える見通し。一方、羽田と都心を行き来する人の約6割が東京モノレールか京急を使っている。「2つの路線だけでは羽田拡張に伴う旅客増に対応できない」(国交省幹部)。JR東日本などはアクセス線で空港拡張に備える。
羽田の拡張に合わせて他のインフラ整備も進む。JR東日本は羽田空港に近い品川駅周辺の再開発も進める。20年を目標に山手線の品川駅と田町駅の間に新駅を開業。隣接地にはマンションやオフィス、商業施設が入る高層ビルを8棟建設する。一帯は税制優遇や規制緩和を通じて海外から企業を誘致、品川を国際ビジネス拠点に育てる。
東急の蒲田駅と京急蒲田駅を地下新線で結び、東京の西部地域と羽田への鉄道アクセスを改善する新空港線「蒲蒲線」構想も進む。実現すれば自由が丘と羽田間が現在の51分から33分に短縮される。約1千億円にのぼる事業負担のあり方や、東京五輪に間に合う整備案を示せるかが課題で、国交省と東京都と大田区、京急、東急との間で具体的な協議が進んでいる。
訪日客増を見込み政府は免税制度を拡充、10月に消費税が免除となる対象品目を増やす。免税店も4月時点で約5800あるが、20年をめどに1万店まで伸ばす計画だ。
しかし課題も多い。1つは宿泊施設だ。JTB総合研究所によると五輪開催時には客室数は1万室不足する見通し。日本文化への理解を助ける通訳案内士も昨年4月時点で1万7千人弱にとどまり、不足している。