米新車販売8年ぶり減少 上半期、乗用車が不調
【シリコンバレー=兼松雄一郎】米調査会社のオートデータが発表した2017年上半期の米新車販売台数は845万2453台となり、前年同期を2.1%下回った。上半期としては金融危機後の景気後退期の09年以来8年ぶりの減少となった。買い替え需要の一巡や金融機関の融資引き締めで、新車販売は調整局面に入っている。
米自動車市場は16年まで7年連続で拡大が続いていた。金融危機後に新車購入を控えた消費者が徐々に買い替えに動いたためで、16年の販売台数は過去最高の1755万だった。だが、買い替え需要が一巡したことで16年下半期から成長が止まり、17年は減少局面に入った。
自動車購入資金向けの融資を膨らませてきた金融機関が審査を厳格化し始めたことも販売減につながっている。米国ではトヨタ自動車など日本車の販売シェアが4割近くに達しており、各社の現地生産や輸出などに影響が出そうだ。
米ゼネラル・モーターズ(GM)のチャック・スティーブンス最高財務責任者(CFO)はアナリスト向け説明会で「需要が縮小しており、17年通年は1700万台を下回るだろう」と語った。同社は年末まで減産を続け在庫を3割以上圧縮する方針だ。
自動車産業は部品から販売、金融まで産業の裾野が広い。このまま販売の減少傾向が続けば、米国景気全体に悪影響を及ぼす可能性がある。
車種別でみると、上半期はピックアップトラックなど大型車が前年同期比4.6%増と好調だった一方、全体の約4割を占める乗用車の販売が11.4%減となり市場全体の足を引っ張った。
メーカー別では韓国の現代自動車が8.5%減、旧クライスラーのFCAUSも6.7%減だった。一方、独フォルクスワーゲン(VW)は7.6%増と伸び、日産自動車も2.7%増で明暗が分かれた。
同時に発表された6月単月の販売台数は前年同月比3%減の147万4360台で、6カ月連続の減少となった。
米自動車サイト、オートトレーダーのミシェル・クレブス上級アナリストは「長期の販売サイクルの中での調整局面。景気指標は良好で深刻ではない」とみる。ただ、英金融大手バークレイズは市場の状況を「緩やかに侵食が進む状況」とする報告書を出した。
自家用車で客を運ぶライドシェアの影響を指摘する声もある。現在、米国だけで400万人以上がライドシェアの運転手をしているとみられる。
「所得の低い層が中古車を入手し、ライドシェアの運転手を始める事例が増えている」(ライドシェア最大手ウーバーテクノロジーズ幹部)。手軽に利用できるライドシェアの普及は中古車の需要を押し上げる一方、新車購入の減少に拍車をかける可能性もある。