女性や訪日客つかむ「ミニ盆栽」模型 静岡発の技
プラッツ、発売から3年で2万個のヒット
創刊38年の「近代盆栽」は盆栽の愛好家に親しまれる月刊誌だ。発行元の近代出版(京都市)によると、部数は月刊5万部。雑誌の略名「KINBON」は今や海外でも知られる。
模型メーカー、プラッツ(静岡市)の商品が近代盆栽の2015年2月号で大きく取り上げられた。商品名は「THE BONSAI」。インテリアとして人気の高いミニ盆栽を12分の1のサイズで模型化した。手のひらにおさまる鉢植えの高さは5センチほど。杉や松、寄せ植えの山野草(さんやそう)など12種類の品ぞろえだ。
近代盆栽の編集部は「ミニ盆栽の世界観のツボを押さえた商品」と花丸印を押す。監修は沼津市を拠点に活躍するミニチュア工芸作家の木村浩之さんと美海きょうこさんの夫婦で、花や草木など植物の造形の第一人者。木村さんは「忠実な描写では面白みがない。デフォルメ(省略化)に頭を使いました」と話す。
プラッツの社長、望月保延さん(59)によると、ベトナムに借りた工場でパーツを作って組み立て、静岡で完成品に仕上げる。
工程は手作業だ。針状の松葉の材料はヤシの実の殻で、表面からはぎ取った繊維をほぐして作る。針金と粘土で枝ぶりを整え、細かいチップを貼り付けて幹の質感を出す。スポンジの粉末をこねて丸めればコケ玉に。情景模型「ジオラマ」のノウハウを小さなアート空間に詰め込む。丸や角型の鉢は現地の山奥の窯元で焼き上げた陶器だ。
価格(税別)は1900円と1800円。発売から3年間で2万個を出荷するヒット商品に躍り出た。女性や海外からの観光客の心をつかみ、成田や羽田空港の土産物店にも並ぶ。
来年中にベトナムの工程を静岡に移す。中身も一新。プラモデルの金型技術でパーツを量産化し、異業種の中小仲間と組んで自動車のシートの起毛技術などを生かす。遊び心とこだわりはそのままに、静岡のものづくりをアピールする。
そっくりフィギュアで話題 観光ストラップも手掛ける
2000年に創業のプラッツはプラモデルや模型マニアの間で広く知られ、所ジョージさんやビートたけしさんの直々の依頼で本人そっくりのフィギュアを手掛ける。家康公の没後400年を記念し、県内の中小4社と共同製作した超リアルな家康公のフィギュア(価格は10万8000円)でも話題を集めた。
静岡市の依頼で今夏に作った携帯ストラップが好評だ。観光名所が描かれた市内の消火栓のふたを再現。静岡観光コンベンション協会から「首都圏でのイベント会場で配布したい」と、5000個の注文が届く。