多様な働き方を受け入れる派遣法に
続けたい仕事なのに、3年たつと変わらなくてはならない――。国会審議が始まった労働者派遣法の改正案では、派遣労働者が困る例が相次ぐ恐れがある。問題はまだあり、期間が30日以内の短期の派遣で働くことは原則禁止のままになっている。
改正案は派遣で働きたい人の身になって十分考えてはいない。政府・与党に法案修正を求めたい。
改正案で評価できる点はある。派遣会社に派遣労働者への計画的な教育訓練や、希望があれば能力開発の相談に乗るなどのキャリア形成支援を義務づけたことだ。派遣で働く人の職業能力の向上を促せれば待遇改善につながろう。
一方で改悪と思える点がある。ソフト開発や広告デザインなど期限を切らずに派遣で働ける専門26業務という区分がなくなり、これらの業務に就いていた人は、派遣会社に無期雇用されないと同じ職場で働けるのが3年までになる。
同じ仕事を続ける中で技能や専門性を磨きたい人もいるだろう。それを妨げていいのか。短期の派遣の禁止も、家計の足しにと1週間でもいいから働きたいといった主婦らから、その機会を奪う。
こうした問題を生んでいるのは派遣法が、派遣労働を例外的な働き方と位置づけているためだ。
改正案では「派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とする」との文言を法律に盛り込む。期間を区切った働き方は不安定で望ましくないという考え方を明確にするということだろう。
しかし、どんな仕事を選び、どんな働き方をするかは本来、個人の自由だ。より多くの人に就業してもらい、労働力不足を乗り越えるためにも、働き方の選択肢は広げるべきだ。
自らの意に反して仕方なく派遣で働いている人もいる。正社員になりたい人は希望がかないやすくなるよう、職業訓練を充実させるなど、派遣労働者の雇用の安定化に力を入れることはもちろん重要だ。だが派遣という労働形態に否定的な立場をとり、これを制限することは、働き方の多様化の流れに逆行する。
安倍内閣は労働時間ではなく成果に対して賃金を払う「脱時間給」制度の導入をめざしている。働く時間が長いほど生産量が増える工場労働が主流でなくなってきたことに対応したものだ。労働者派遣も、時代の変化に合った制度を整える必要がある。