「関西まちナビ」 兵庫県姫路市、歩いて楽しい駅前改造中
世界遺産・姫路城のお膝元、JR姫路駅前で「歩いて楽しい」まちづくりが進んでいる。周辺の再開発をはじめ、車の進入制限、商店街のアーケード刷新などの取り組みが相次ぐ。2014年に地元出身の戦国武将を描くNHK大河ドラマが放送、15年春には姫路城が大修理を終えるなど、地元に吹く追い風を生かそうと、官民が知恵を絞っている。

今月上旬、姫路駅北口の再開発用地で地元の神姫バスが9階建ての複合ビルを着工した。事業費は31億円。バスターミナルの上層階に飲食店やオフィスなどを誘致する。創業以来の大型案件だ。

同ビルは駅北側に生まれる再開発ビルの第1弾だ。JR姫路駅ビル「ピオレ姫路」が開業した4月以降、駅前には新たな人の流れが生まれている。神姫バスの担当者は「再開発はまたとない好機」と話す。

北駅前広場の周辺では16年までにホテルやシネマコンプレックス、専門学校が完成する。市は「神戸、大阪に流れていた客に止まってもらえる」と期待する。自動車の普及やJRの高速化で薄れつつあった「播磨の玄関口」としてのにぎわいを取り戻す考えだ。
大河・城修復…
姫路には今、追い風が吹く。戦国武将の黒田官兵衛を描く大河ドラマ「軍師官兵衛」に加え、15年には姫路城が「平成の大修理」を終え久しぶりに全貌を現す。再開発自体はJRの高架化に伴う40年前からの計画だが、ここに来てまちづくりの機運がにわかに高まった。
北駅前広場と片側3車線の大手前通りでは改修工事が最終段階だ。目を引くのが歩行者優先の発想。ロータリーに入れるのはバスとタクシーだけ。駅中心の500メートル四方は一般車の進入を原則禁じ、大手前通りは車線を減らして歩道を広げる。
当初はクルマ優先で計画が進んだが、地元商店街が「待った」を掛けた。「集えて憩える駅前広場と商店街」。姫路市商店街連合会の松岡淳朗会長はそう表現する。広場や歩道ではオープンカフェの計画も進む。
姫路の中心市街地にはアーケードをかけた12の商店街が縦横に広がる。かつて駅と城を結ぶ目抜き通りだった御幸(みゆき)通りをはじめ、雨でもぬれずに歩ける街はさながら平面の百貨店だ。「人とクルマが交差しないで回遊できる街を目指した」(松岡会長)
御幸通りは総工費5億円強でアーケードを刷新する。城下町に合う和のデザインで来春完成予定だ。有志の商店主らが運営する官兵衛商品の店「黒田屋官兵衛商店」も29日に開く予定だ。
店の新陳代謝も進む。若い世代の出店が多いのが小溝(おみぞ)筋商店街だ。店舗が小さく出店費用が低い上、だまし絵を使った活性化が効果を上げつつある。「営業を長く続けようと考える店主が増えてきた」と商店街振興組合の蓑畑八基理事長はみる。
「街に居住」促進
もちろん郊外開発による顧客流出や店主の高齢化などの課題は姫路も同じだ。そこで姫路商工会議所は市に、1階に店舗などが入ったマンションの建設を可能にする容積率緩和を求めた。「街なか居住を促進し、買い物客を増やしたい」(吉田裕康専務理事)。
色とりどりの官兵衛ののぼりがはためく街中では、大型店と商店街が連携した集客策も検討が進む。個店の魅力を磨きながら街の回遊性を高めるには格好のタイミングと言えそうだ。
(神戸支社 天野賢一)