自民、得票率43%でも圧勝 乱戦が後押し
小選挙区制の特性、「死票」53%に
今回の衆院選で自民党の小選挙区の得票率は43%と5割に満たない。全300選挙区の約8割を占める237議席という数字との格差が目立つ。自民、公明両党は比例代表を含めると定数の3分の2以上の議席を確保した。現行制度下で最多の12党が挑んだ乱戦に伴い自民、民主など既成政党への批判票が分散。各選挙区で1人しか当選できない小選挙区制の特性が自民の圧勝を後押しした。
今回の小選挙区の総有効投票数は約5962万票。このうち小選挙区で落選した候補に投じられて議席に反映されなかった「死票」は3163万票で、全体の53%に達する。民主党が大勝した2009年の前回衆院選と比べて死票率は約7ポイント上昇した。
前回が自民、民主の二大政党対決の色が濃かったのに対し、今回は優勢が伝えられた自民に、民主党だけでなく第三極勢力が乱立状態で挑む構図となった。それが有権者の選択肢を広げ、死票になる確率を上げる結果につながったとみられる。
政党別に死票率を見ると、自民が13%、9人の小選挙区候補全員が当選した公明はゼロと低い。対照的に、民主党は83%と高い。有権者が民主党に投じた1票のうち、議席に反映したのは小選挙区では2割に届かない計算だ。同党に投じられた死票数は1122万票と東京都の全有権者数を超える大きな数字だ。日本維新の会(82%)や日本未来の党(94%)も高かった。
有権者の投票行動がそのまま選挙結果に直結するわけではない。民主の小選挙区の議席占有数は9%にすぎず、自民の79%にはるかに及ばない。一方、得票率では23%を占める。初陣で第三党になった日本維新の会は得票率12%に対して議席占有率は5%だった。
比例代表の自民の獲得議席は57で、大敗した前回の55から2つ上積みしただけ。全180議席の3割強程度だ。今回の衆院選で自民党が有権者の信頼を一気に回復したとは必ずしも言えない。
死票が多くなりがちな小選挙区制は本来、二大政党制とセットであるべきだとされる。ただ、現行の制度は比例代表を組み合わせた仕組みのため、多数の政党が参加する余地が大きい。実際、前回の衆院選では9、今回は12の政党が名を連ねた。第三極政党間の選挙協力も進まず、自民党は「漁夫の利」とも言える形で、効率的に議席数を拡大した。