次の狙いは玩具売り場 貪欲ソフトバンクの拡大戦略
ソフトバンク子会社のソフトバンクBBは7日、スマートフォン(スマホ)やタブレット(多機能携帯端末)と連携する子供向けハイテク玩具の販売に参入すると発表した。まず米欧やアジアの玩具メーカー5社の16製品を9日から発売する。海外で市場が拡大するハイテク玩具にいち早く参入し、将来の収益源に育てるとともにスマホアクセサリーの品ぞろえを強化する。家電量販店の玩具売り場を新たな販売ルートとして開拓する狙いもある。
iPadで仮想水槽
7日に発表したのは、スマホやタブレットを本体内のスロットに挿し込んだり、タブレットをコントローラーとして使ったりする機能を持つハイテク玩具。例えば、iPadを箱の上に置くと箱の中に魚が泳ぐ姿が浮かび上がる「ルクシィアクアリウム」(英エスケープテック)や、iPhoneを挿し込んだ犬小屋の中でバーチャルな犬を飼える「ルクシィパップス」(同)、ぬいぐるみの中にスマホを挿すと対話でき、おとぎ話などを聞かせてくれる「ウーブリー」(米ウーブリー)などだ。
いずれもユーザーが手持ちのスマホやタブレットに連携アプリをインストールし玩具本体と連動させる。ソフトバンクBBが連携アプリを日本語化し、外箱や添付の説明書なども日本語版を用意。ユーザーサポートの窓口も同社が担当する。対象年齢は製品により異なるが、3~6歳の幼児を主な対象としたものが多い。
発表会に登壇したソフトバンクBBマーケティング部の本間忠部長は「すぐにハイテク玩具の市場があるとは思っていないので、まずはユーザーに知ってもらうよう取り組みたい」と控えめに話す。とはいえハイテク玩具への参入は、同社の事業戦略にとって複数の点で大きな意味を持つ。
「タイムマシン経営」の新しい玉に
まず、ソフトバンクが得意とする、海外と日本の流行の時間差を狙い収益源とする「タイムマシン経営」の新たな材料としてハイテク玩具を位置付けた点だ。
日本玩具協会によると、2012年度の国内の玩具市場は前年度比2.5%減の6730億円で、デフレの長期化や少子化により低迷傾向にある。ただしスマホ連携機能などを含むハイテク玩具は、同7.4%増の63億円。市場規模はまだ小さいが伸び率が大きく、今後の成長が期待できる。
本間部長は「日本でも流行しそうな新しいジャンルのスマホ連携機器がどんどん出てきている。海外メーカーからスマホ向けのアクセサリーを調達する際、併せてハイテク玩具を調達することはさほど難しくない」としている。競合の少ない今のうちにハイテク玩具市場に目を付け、市場の成長期に大きく収穫することを狙う。
玩具売り場もソフトバンク色に
2つ目がソフトバンクBBにおける製品ポートフォリオの見直しだ。
同社は近年、スマホのケースや保護フィルムといったアクセサリーの売上比率が大きくなっている。ただ、こうした製品は単価が低いうえ、他社との競合も激しい。国内のスマホ販売台数は13年に入って前年割れを記録する月も出てきており、今後アクセサリー市場が飽和する恐れもある。
そこで同社は新たな分野の製品開拓を加速させている。3月には米国で流行しているスマホ連携機能付き活動量計「Fitbit(フィットビット)」の輸入販売を開始。今回のハイテク玩具はこれに続くものだ。取り扱う製品のジャンルを広げ、流行に左右されない製品ポートフォリオにしたいとの思いがにじむ。
3つ目は、家電量販店の玩具売り場という新たな販売チャネルの開拓を狙う点だ。同社はもともと、パソコンソフトを家電量販店などに卸売りする事業で大きく成長した経緯があり、パソコンやスマホの関連製品では強力な販路を持つ。一方で玩具担当のバイヤーとは、これまでほとんど取引がない。「玩具売り場に入っていけると心強いと思っており、現在開拓を進めている」(本間部長)
とはいえ、玩具売り場は国内大手玩具メーカーや家庭用ゲーム機メーカーなどがひしめく激戦区。ソフトバンクといえども新規参入は容易ではない。そこで、スマホ連携という特徴を持つ製品を活用。既存販路である程度の販売数量を確保して「保険」を掛けつつ、玩具担当バイヤーに対してはスマホ連携機能の目新しさを訴求して棚の確保を狙う、二正面作戦で臨む方針だ。
(電子報道部 金子寛人)