迫る固定電話の終焉、巨大台風が襲ったNYの大胆な取り組み
ITジャーナリスト 小池 良次(Ryoji Koike)
5月3日、米国の大手通信事業者ベライゾン・コミュニケーションズは災害で壊滅した固定電話網の破棄を申請し、ニューヨーク州政府は6月に承認した。固定電話はライフラインと呼ばれ、長らく市民の生命財産を守る重要な役割を担ってきた。同社は携帯電話網で代替サービスを提供するが、「固定電話の終わり」は全米で大きな注目を集めている。
巨大台風で固定電話網が寸断
きっかけは、超大型ハリケーン「サンディ」。2012年10月末にアメリカ東部を直撃したサンディは、ニューヨーク州でも洪水や交通機関のマヒ、広域停電などを引き起こした。その被害額は全米で650億ドル(6兆5000億円)に達している。
ニューヨークのなかでも、広い沿岸部を抱えるロング・アイランド地域は特に被害がひどく、電話網も壊滅的な被害を受けた。ロング・アイランドは東西約190キロメートルの細長い島で、ニューヨークの中心マンハッタンから真東に大西洋に向かって伸びる位置にある。
ベライゾン・コミュニケーションズはサンディが破壊した固定電話網の復旧を進めていたが、同地域でもっとも深刻な被害を受けたファイヤー・アイランド西部地区については、固定電話網の再建を断念した。同地区はロング・アイランド本体から、さらに大西洋に張り出した幅数百メートルの細い海峡状の島で、夏はマンハッタンから訪れる人々でにぎわうビーチの名所でもある。
ファイヤー・アイランド西部地区(東西約25キロメートル)には約2700回線の固定電話利用者がいる。だが、サンディにより電話線は寸断され、本島と結ぶ中継ケーブル6本は1本を残して切断された。
ケーブルの再設置をあきらめ無線を利用
地域住民およびニューヨーク州政府は、13年夏の海水浴シーズンまでに電話網の再整備を望んでいたが、...