昭恵氏が15年11月著書に明記した「寄付の渡し方」
「アベ友事案」第一弾である「森友事案」の全貌がかなり明確に浮かび上がってきた。
「森友事案」には三つの側面がある。
第一は森友学園の教育内容の問題。
第二は森友学園による補助金受領等に関する不正疑惑の問題。
第三は森友学園に対する国有地激安払い下げの問題。
三つの側面は、それぞれに重要な問題であるが、安倍政権の存亡にかかわる重大事案は、三つ目の国有地激安払い下げ問題である。
この問題の輪郭がかなりはっきりと浮かび上がってきている。
焦点は2015年9月から2016年6月にかけての経緯である。
2015年9月5日に、安倍首相夫人である安倍昭恵氏が森友学園の塚本幼稚園で講演し、新設される予定だった瑞穂の國記念小學院の名誉校長に就任した。
この日に、安倍昭恵氏が安倍晋三氏からの100万円の寄附を行ったのかどうかも争点のひとつに浮上している。
そして、その後、森友学園の籠池理事長から安倍昭恵氏に対して学校用地の問題等について行政当局への働きかけの依頼があったと見られる。
そして、安倍昭恵氏の秘書の役割を担っていた谷査恵子氏が行政当局に要望事項を伝えて、その回答を籠池氏側にFAXで伝達した。
この段階では、要望が完全に通ることはなかったが、その後に状況が急変して、森友学園が国有地を激安価格で取得するなどの結果が生まれた。
このことから、安倍昭恵氏による「口利き」を契機に、森友学園に便宜ならびに利益が供与された疑いが浮上している。
安倍政権は安倍昭恵氏は「口利き」を行っておらず、情報提供等は谷査恵子氏独自の行動であり、安倍昭恵氏は森友学園が取得した土地の問題等に関与していないと主張しているが、十分説得力のある説明はなされていない。
谷査恵子氏から籠池氏に送られたFAXには以下の記載があった。
前略 平素よりお世話になっております。
先日は、小学校敷地に関する国有地の売買予約付定期借地契約に関して、資料を頂戴し、誠にありがとうございました。
時間がかかってしまい申し訳ございませんが、財務省本省に問い合わせ、国有財産審理室長から回答を得ました。
大変恐縮ながら、国側の事情もあり、現状ではご希望に沿うことはできないようでございますが、引き続き、当方としても見守ってまいりたいと思いますので、何かございましたらご教示ください。
なお、本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております。
内閣総理大臣夫人付 谷査恵子
二つの点に注目する必要がある。
第一は、谷氏が
「現状ではご希望に沿うことはできないようでございますが、引き続き、当方としても見守ってまいりたいと思います」
と記述していることだ。
谷氏が回答した時点では、森友学園の要望事項は直ちに通っていないが、それから約半年の間に、森友学園側に破格の条件がもたらされているのである。
この結果と「当方として見守ってまいりたい」
との因果関係を考察することが極めて重要である。
第二は、谷氏が
「本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」
と記述していることだ。
安倍政権はこの案件は谷氏の独自の行動としているが、そうではなく、安倍昭恵氏の指示によって谷氏が動き、この時点での状況を籠池氏と安倍昭恵氏の両方に伝えたと読むのが順当な理解になる。
安倍政権は安倍昭恵氏が関与したことにしたくないから、事実を歪曲して事実でない解釈を示している疑いは濃厚に存在する。
この点に関する疑問は、国会審議を通じて何も明らかになっていない。
安倍政権が安倍政権に都合の良い説明が提示されているだけである。
この点を明らかにするには、まずは、安倍昭恵氏が国会で説明することが必要不可欠である。
安倍首相は安倍首相の主張に誤りがないなら、安倍昭恵氏が国会で説明する場を積極的につくるべきである。
そのことが疑惑を解消することへの最短コースなのであるから、安倍首相がこれを拒む理由がない。
また、安倍昭恵氏による寄附に関して、作家の斎藤美奈子氏が3月22日付の東京新聞「本音のコラム」において、極めて重要な事実を摘示しており、これを踏まえるべきである。
斎藤美奈子氏が取り上げたのは、安倍昭恵氏の著書『「私」を生きる』(海竜社、2015年11月刊)に記述されている内容だ。
斎藤氏はこの著書に書かれている内容として、安倍昭恵氏が持っている二つの行動指針を紹介している。
二つの行動指針とは、
「ちゃんと自分の目で見なさい」
と
「寄付をするときは、必ずしかるべき人に直接、手渡さなければならない」
である。
この著書が刊行されたのは2015年11月。
安倍昭恵氏が森友学園を訪問して寄付を手渡したとされる時期の直後である。
どうしても安倍昭恵氏の証人喚問が必要である。
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