アニメ「プリキュア」、アプリで狙う2つのスポンサー
アプリは日曜午前8時半からの番組放映中に起動させる必要がある。スマートフォン(スマホ)の音声認識機能が番組の音を拾い、認識するとプリキュアの3Dモデルデータがダウンロードでき、キャラクターと一緒に写真撮影ができる。アプリには時間指定がかけられており、放送時間帯以外だと、起動してもデータはもらえない。ここに1つめのカギがある。
番組放送中に限定したのは「コマーシャルも含めて、テレビを見てもらうため」(朝日放送ビジネス戦略局コンテンツ事業部の白井良平氏)。テレビの録画機能の向上に加え、ユーチューブなど動画投稿サイトの普及で、放送時間帯以外でもいつでも番組が見られる時代。録画機能を使う視聴者は、CMは早送りで飛ばしてしまい、番組コンテンツに集中しがち。テレビ局側にとってはCM提供企業からの収入が収益源だ。アプリの一番の狙いは、このCMを見てもらうことにあるのだ。
これまでも、ポスターやテレビCMにかざすと特典がもらえるアプリなど、広告に注目させる手法は登場している。ただ、消費者が広告を見るのは特典を得るためで、よほど鮮烈なものでない限り内容が印象に残りにくい。一方、朝日放送のアプリはプリキュアのコンテンツを核にしており「宣伝」のイメージを出さずにスポンサーのCMを見てもらえる。
もう1つ、アプリが狙う「スポンサー」は、メーン視聴者である女児の保護者だ。プリキュアファンはまだスマホを持っていない世代。プリキュアの画像と一緒に写真を撮るには、アプリのダウンロードや起動など、スマホを持つ年長者の協力が不可欠だ。CMで紹介するキャラクター関連商品を買う際、財布を開くのも保護者だ。「親子の間でプリキュアを介して触れ合いが生まれる」(白井氏)だけでなく、女児にとってスポンサーに当たる保護者と一緒にテレビを見てもらう意義は大きい。
テレビを見ながら、スマホやタブレットで情報収集・発信する「ダブルスクリーン」は一般的になりつつある。スマホを軸に特定の時間帯にテレビの前に視聴者を誘導する。ドキドキ!プリキュアの視聴率はアニメ番組でも上位に付けており、朝日放送の新たな取り組みは一定の効果があったといえそうだ。
(松本史)
[日経MJ2014年1月17日付]
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