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「金融CSR」への挑戦
「第3回エコ貯金フォーラム-ソーシャル・ファイナンス発展のために預金者・金融の現場・経営者ができること-」の第5回目。今回は高瀬美由紀さん(中央労働金庫)のお話を紹介します。
「金融CSR」への挑戦~中央ろうきんのNPO支援施策~
中央労働金庫 総合企画部 CSR企画 高瀬美由紀
「労働金庫(以下(ろうきん)」とは、働く人々による「助け合いの精神」で成り立つ金融機関である。労働者は組合費を労働組合に払い、労働組合は「ろうきん」に出資金を出したり預金し、「ろうきん」は、勤労者に融資をするという関係で成り立っている。「ろうきん」は、労働組合・事業者に対する金融審用事業である。
終戦直後の日本は、個人の信用力がない時代で、個人の資金調達方法は、高利貸しや質屋(通称一六銀行)からの借金に頼っていた。当時の労組は、高利の借金に苦しむ組合員対策に頭を痛めていたが、スト資金としての団体資金はあったが、金融機能を持っていなかった。
「自分たちのために、自分たちのオカネで自分たちの資金を循環させていく仕組みを作ろう!」
「質屋・高利貸しからの解放を目指し、自分たちの銀行をつくろう」
という組合員の気持ちがたかまり、1950年、岡山と兵庫に労働金庫が誕生し、3年後に労働金庫法が施行された。
「ろうきん」は、会員が行う経済・福祉・環境及び文化に関わる活動を奨励し、人々が共生できる社会の実現に寄与することを目的にすることを謳っている。「ろうきん」は働く人の団体、市民の参加による団体を会員とし、そのネットワークによって成り立っている。会員は平等の立場で運営に参画し、運動と事業の発展にと努めている。「ろうきん」は誠実・公正・公開を旨とし、健全経営に徹して会員の信頼に応える金融機関である。
現代の労働組合・労働者(「ろうきん」では「勤労者」としているが、ここでは「労働者」の呼称を使う)が抱える課題として、将来への不安、労働運動の求心力、今日的な豊かさの追求がある。生活や福祉に関わる課題が増え、労働組合組織率が低下して労働運動の求心力がなくなりつつある(これについてはいろいろいいたいこともあるが、ここでは触れない)。価値観・意識が変化してライフスタイルが多様化し、社会との関わりを求めて自己実現・確認を希求するなど、「豊かさ」の指標も変化している。また少子高齢化の進行、雇用不安や失業率の増加、環境問題など、個人的では解決できない問題が出てきた。それら個人では解決できない社会的課題の解決のために、NPOが台頭してきた。NPOは、新しい社会セクターとしての「市民」として、自主・自立の新しい社会を構築するための、新しい社会の担い手として期待されている。
1998年に特定非営利活動促進法が制定され、この法律に基づいて認証された法人は、2010年現在で39,893法人ある。社会福祉系のNPO法人は45%を占めるが、全体の約7割が年間500万以下の収入で運営しているのが実情だ。
「ろうきん」がNPO融資制度創設に関わったのは、1995年に発生した阪神・淡路大震災がきっかけである。この年は「ボランティア元年」といわれ、多くの市民・ボランティア団体台頭すると同時に、行政・企業型縦型社会の限界を実感させられた。この時、被災地に赴いたボランティアたちや職域・労組関係者は、社会作りで手を取り合うのは必然なのではないかという思いを抱くようになった。
1996年、震災で出会った仲間と一緒に、ボランティア団体の学習会を立ち上げた。翌年、労組とボランティア団体との共同をテーマにした300人規模のシンポジウムを開催し、組織外の理解者の共感を得て、大成功を収めた。この年、1都7県の支援センターの訪問を開始した。
1998年、立ち上げ期の団体(NPO・NGO】の支援をするための「助成プログラム取り扱い」を開始した。これと並行して、資金ニーズの把握と、活動分野の調査を行うマーケットリサーチを開始した。
NPO融資制度を創設したのは、公的介護保険制度の改正(1998年)もきっかけの一つである。公的介護保険制度の指定事業者に、NPO法人が加わり、福祉系NPO法人がその準備を開始した。しかし事業開始から資金入金まで3ヶ月かかり、その間の資金ショートの問題が発生したことから、運転資金のニーズが急増した。実績のないNPO法人は信用力がないから金融サービスが受けられない。ここで「ろうきん」は、「社会にとって必要な事業にファイナンスを提供していく存在」であるという理念に回顧し、NPO向け資金融資制度の立ち上げに動いた。
~投資に躊躇している方、寄付に迷っている方へ~
「第3回エコ貯金フォーラム-ソーシャル・ファイナンス発展のために預金者・金融の現場・経営者ができること-」の第4回目。今日は金融機関の現場から-現場からのボトムアップで目指すソーシャルファイナンス-の前編として、大和証券の山本聡氏のお話を紹介します。
Activate Your Money For Social Good!
~投資に躊躇している方、寄付に迷っている方へ~
大和証券株式会社 商品企画部 次長
山本 聡
世界は今、貧困・飢饉・医療・水・気候変動などさまざまな困難に直面している。これら社会的な課題の解決には莫大な資金が必要である。しかし、公的なセクターである先進国各国は政府は、深刻な財政難に直面しているし、民間セクターからの寄付や善意の活動には限界がある。各国政府に代表される政策サイドの「民間投資資金を効率的に活用できないか」という思惑と、投資家サイドの”do well by doing good”の気運の高まりが重なり「投資を通じて社会を動かそうと言う新しいムーブメントが起こり始めた。それが「意思のある民間投資資金」で、投資家は社会的な課題を解決するための活動をしている企業に投資し、そこからリターンを受け取るのである。
「リーマン・ショック」以降、この動きは顕著になっている。
2007年段階での市場規模は、欧州は352兆円、アメリカは237兆円、カナダは42兆円、オーストラリア・ニュージーランドでも約6兆円あるが、日本は1兆円にも達していない。投資家はアメリカ・カナダ・ヨーロッパは機関投資家(生・損保等)が9割以上を占めるが、日本は個人投資家が9割近くを占める。
個人金融資産の保有比率は、アメリカは株式を中心に(31%)保険年金(28%)、投資信託(18%)、現金預金(19%)とバランスよく持っているのに対し、イギリス・ドイツ・フランス3カ国では保険年金がメインであり、日本は厳禁だけで6割近く(56%)を占める。
マイクロファイナンス債券の特徴は「ワクチン債」「グリーン世銀」などシンプルな商品性と、わかりやすいメッセージである。これらは満期一括債で、固定金利である。日本では2008年、大和証券がワクチン債を発行したのをきっかけに、今年になって10種類以上のソーシャル債が発行されている。
ソーシャルビジネス・マイクロファイナンスが一番力を発揮するのは、貧困問題の撲滅だろう。世界の人口の4割にあたる約27億人が、1日2ドル以下での生活を強いられている。これらの人々には経済活動に参加する機会がないから、いつまで経っても貧困から抜け出せない。彼らを救う手段として、1970年代半ばから「マイクロファイナンス」という手段が登場した。
これは、貧困に直面する人々に、金融サービスを通じて経済活動へ絵の参加機会を提供しようというシステムである。各地域のマイクロファイナンス機関(MFIs)は、貧困層に生産活動・収入想像のための資金を無担保で貸し付ける。平均的融資額は数10~数100ドルで、借り手は女性が多い。相互監視体制により、平均的な返済率は95%を超えており、寄付やボランティアではなく、ビジネスとしてちゃんと成立してる。
マイクロファイナンス投資額は、2001年は40億ドルだったが、2008年には融資額が370億ドルにまでなった。しかし、必要とされる資金にはまだ2,000億ドル足りず、資金調達も国際機関に多くをおっている。そのため、資本市場からの資金調達が、持続的発展のカギを握っている
金融機関におけるサステナビリティの実践
「第3回エコ貯金フォーラム-ソーシャル・ファイナンス発展のために預金者・金融の現場・経営者ができること-」の第3回目。今日はHSBCの顧問・山田晴信さんのお話を紹介します。
トークセッション-1
金融機関におけるサステナビリティの実践
山田 晴信(やまだ はるのぶ)
HSBC顧問
HSBCは、1865年に設立され、英国ロンドンに本部を置く、世界をリードする金融サービス機関である。世界88カ国に、約8,000の拠点がある。日本には1866年にやってきた。現在の総資産額は2兆3,640億ドルで、利益の半分を香港・上海・ラテンアメリカで稼いでいる。
HSBCの「持続可能性へのコミットメント」について、グループ会長のスティーブン・グリーン氏は、「我々は、事業の持続可能性において、世界をリードするブランドの一つになることをも苦境にする」ことを掲げている。
HSBCにとって「持続可能性」とは、長期的なビジネスの成功を確実にするために、環境・社会・経済の正しいバランスを維持するような、意思決定を行うことである。こうした意思決定が、我々のステークホルダー(利害関係者)にとって長期的な価値をもたらし、HSBCのブランド価値を高めることになると信じている。
取締役は社内6人、社外15人で構成されている。
次に、HSBCのCSに関する取り組みについてご紹介したい。
2005年、HSBCは世界で初めて、カーボンニュートラルを達成した大手金融機関になった(「カーボンニュートラル」の概念についてはこちらを参照)。また、全事業拠点で、FSC認証紙をガイドラインに規定した。FSC認証紙とは、適切に管理された森林からのチップが原料であると証明された紙のことで、追跡可能な唯一の用紙である。この紙を使うことで、不法(違法)伐採などの圧力から森林を守ることにつながり、健全な森林経営を応援することになる。自らのバイオマスエネルギー(黒液)を利用する事で、化石燃料を抑制し、化石燃料由来のCO2排出量の削減につながる。この紙を導入したことで、85万トンのCO2排出削減に成功した。この紙は世界的な自然保護団体(WWF)が推奨しており、バージンパルプを使用している為、再生紙や非木材紙に比べ印刷品質が向上する利点がある。
企業への融資は、FSCの原則に則って行っている。FSCの原則とは、森林管理や先住民、地域社会や労働者の権利を尊重するための原則である。赤道原則とは、世界銀行グループの環境社会配慮に関する方針や、ガイドラインを民間金融機関に拡げた取り組みであり、採択した金融機関は、プロジェクトファイナンス案件において、この基準に沿った環境・社会への配慮が行われるようにプロジェクト実施者と協議し、基準を遵守しない案件への融資を行ってはならないという原則である。
預金者は主権者~社会を変えるための金融~
「第3回エコ貯金フォーラム-ソーシャル・ファイナンス発展のために預金者・金融の現場・経営者ができること-」の第2回目。今日は田中優さんのお話を紹介します。
預金者は主権者~社会を変えるための金融~
田中 優(たなか・ゆう)
未来バンク事業組合理事長
日本国際ボランティアセンター理事
ap bank監事 等
NGOというのは、人間を一人の人間に立ち返らせるものだと思う。自分の意思がないのは、奴隷でしかないのだ。今日は「お金」がテーマになっているので、その話をしたい。
日本国内には、ムダな公共事業が多すぎる。その例を2つ挙げる。
静岡空港というのが問題になっている。この空港は山の半分を削ったので、世界一建設費用のかかる空港になってしまった。県側は年間135万の利用者を見込んでいるが、航空会社労組は、利用者はやっと20万人だろうと推定している。これらの建設資金には、郵便貯金からの財政投融資が使われている。静岡銀行は、わりと評判の高い銀行のはずだが、静岡銀行はこの空港建設のために、多額の融資をしている。
北海道に「二風谷(にぶだに)」というダムが建設された。’97年に建設されたが。少なくても5年後の2002年には砂で埋まってしまい、使い物にならなくなってしまった。ダムは後ろから埋まっていき、水底が見える時点では、貯水能力がなくなった。このダムの建設費は152億円かかったが、国はこのダムを含める周辺の土地を52億円で売ってしまった。本当にムダなことをやっている。さらにこのダムの上流には、沙流川(さるがわ)ダムの建設予定もある。もともと「沙流川」とは、「砂の流れる川」という意味だったが、現実はかくの如しである。
将来を予測してみると、少子高齢化の傾向は止まらないことがわかる。政府発表のグラフに対し、現実は予測よりも低い値で推移している。このままいくと、100年後には人口は半減するから、政府は今の政策を変更する必要がある。
今の日本の財政は、1,000兆円の借金を抱えているといわれるが、実際はもっと多いかも知れない。これに対し、個人の貯蓄は1,500兆円あるといわれている。ただしローンを抱えている個人が多いので、その分をのぞくと、実質は1,000兆円になる。日本は少子高齢化の進行によって税金・公的負担が増加し、財政改革は全く進まず、国の負債は増大する一方だ。
このままの状態で推移すれば、国の赤字額は個人の資産を上回るようになる。足りない部分を海外の投資家から借りなければならないが、エネルギー自給率が4%、木材の自給率が20%、食料自給率が41%しかない国家に投資する、酔狂な投資家がいるのだろうか?借りるとすれば、相当な高金利でしか資金を調達できない。円は暴落し、ハイパーインフレが起こるだろう。
ではどうしたらいいのか?我々の運動には3つの方向性がある。自ら政治家になったり、影響を与えられるポジションから世界を変える方法(タテ)、隣の人に話したり、多くの人たちのムーブメントから変える方法(ヨコ)、全く別の仕組みを考え、現実にやってみせる方法(ナナメ)である。
個人がお金を預けるの口座は、密接に社会につながっている。年金・簡易保険・郵貯は財投機関を通じてダム・原発・ODAなどに投資され、それらは環境破壊や人権侵害につながっている。銀行預金は短期国債で運用され、それを通じてアメリカ国債に投資され、米国の戦争費用になっている。日本は先の第二次大戦で、戦費の7/8は郵貯で調達された。また、イラク戦争の時は、日本は最大で7,000億ドル以上をアメリカ国債に投資している。日本は、イラク戦争の戦費の9割を負担している。農民のための組織であるはずの農協のお金は農林中金を通じて世界銀行債に変わり、それが農業の自由化につながる原因になっている。投資信託のお金はグローバル企業に回され、カジノ経済化に拍車がかかった。
経済のグローバルを食い止めるため、全国各地でNPOバンク設立の動きが急速に広まっている。北は稚内(北海道)から南は鹿児島まで16都市にある。従来の金融機関は、地方で集めたお金を中央で決めていたのだが、これらのNPOバンクは地方で集めたお金は地方で決める、みんながお金の主権者になるという趣旨で活動している。
エコ貯金プロジェクトのこれまでとこれから
6月27日、広尾にあるJICA地球広場において、A SEED JAPANの「エコ貯金プロジェクト」主催のセミナー「第3回エコ貯金フォーラム-ソーシャル・ファイナンス発展のために預金者・金融の現場・経営者ができること-」が開催された。当日は、250名収容の会場に、客席の8割が埋まる盛況ぶりであり、「環境とオカネ」に関心を持つ人たちが多いことを窺わせた。講演の多くは、当日配布されたレジュメに沿って行われたが、当ブログでは、管理人の記憶に残っている範囲で、その講演内容を再現してみたい。
オープニング「エコ貯金プロジェクトのこれまでとこれから」
浦山祐史(A SEED JAPAN エコ貯金プロジェクト スタッフ)
自分は今年26歳で、普段はシステムエンジニアをしている。’08年1月から「A SEED JAPAN(以下ASJ)でボランティアをしている。私が所属している「エコ貯金プロジェクト」は、ASJのプロジェクトの一つで、’03年から活動している。
貯金には3つの性格があると思う。ATM、コンビニでの引き出し、利率などの「利便性」、自己資本比率、格付けなどの「健全性」、応援したい分野への融資、自分が反対する分野への融資を制限する「社会性」である。我々が提唱する「エコ貯金」とは、利便性・健全性・社会性を兼ね備えたものである。
私たちは、預金先を選ぶ権利がある。具体的には、社会問題を引き起こす企業に融資する金融機関に預金せず、環境問題に取り組む企業を支援する金融機関に預金するのだ。「エコ貯金プロジェクト」では現在、「口座が変われば社会が変わる」キャンペーンをやっている。我々の提唱する「エコ貯金」で、金融機関を選ぶ意識を預金者に持ってもらい、預金者の声を金融機関に届ける活動である。参加者には、現在の金融機関から、エコ貯金として預け替える額と預金先を宣言する「エコ貯金」宣言をしてもらう。5年間でたまった「エコ貯金宣言」は、金額ベースで1兆円を突破した。宣言前は、郵便局と都市銀行で7割近くを占めていたのだが、宣言後は労働金庫と信用金庫で6割を占めるようになった。
同時進行のプロジェクトとして、金融機関に公開質問状を3回送付(’05・’08・’09年)し、社会的事業の融資、兵器産業や人権侵害をしている企業等への融資について質問した。結果、情報配慮型融資の情報公開、クラスター爆弾製造企業への投融資の問題への対応などで進展が見られるなど、一定の効果を上げた。
アースデイ2010
先日、日本最大の環境系イベント「アースデイ東京2010」に行ってきた。前日の関東は、実に41年ぶりの積雪という事態に見舞われ、客足がどの程度伸びるか心配されていたが、初日の昨日は、天候の回復とともに順調に来場者数が増えた。
さて、ここでアースデイの歴史をざっとおさらいしてみたい。
アースデイは1970年、ウィスコンシン州選出のG・ネルソン上院議員が、4月22日を"地球の日"であると宣言したことがきっかけになって誕生したイベントである。当時の米国はベトナム戦争の真っ最中で、国内はベトナム戦争に反対する学生があちこちで反対行動やデモ行進を行い、警官隊と衝突して逮捕者が出るなど、激動の日々であった。カシアス・クレイがムスリム(イスラム教徒)に改宗して「モハメド・アリ」を名乗り、戦争反対の意志を貫いて徴兵拒否宣言をしたため、チャンピオンベルトを剥奪され、それを不当としたアリが裁判闘争を起こしたのも、ちょうどこの頃である(なお、アリのこの訴えは裁判所から「良心的兵役忌避者」と認定され、無罪が確定している)。
ネルソン議員の呼びかけに呼応し、全米中の学生のとりまとめ役になったのは、当時米学生自治会長をしていたデニス・ヘイズ氏である。こうして開かれた1970年のアースデイは、全米で参加者が2,000万人以上が参加し、地球への関心を表現するアメリカ史上最大のユニークで多彩なイベントとなったのである。
日本でアースデイが開催されたのは、2001年4月である。イベントは明治神宮と代々木公園でおこなわれれたが、新宿パークタワーでは、ブロードバンドを使って、初めて広くインターネット発信された。初めての開催にもかかわらず、来場者数は8万人を超えた。その後もアースデイは認知度を高めていき、4回目の開催になった2004年の大会は、芸能人が多数参加したことも会ってか、来場者数が10万人を突破した。そして、その後も入場者数は毎年のように10万人を超える、日本最大の環境イベントにまでなった。
今年のアースデイは「愛と平和の地球の祭典」をメインテーマに、参加グループ424グループ、テント数275張り、参加イベント121、参加ボランティア637人という、史上最大の規模で開催された。参加団体も、当初は環境系が中心だったのだが、近年はグローバルかを反映してか、国際交流団体や地域保全のために活動する団体などの団体が目立つ。今年の例だと、マイクロファイナンスの普及を目指すNGO、山口県祝島(いわいしま)に建設予定の上関原発に反対する市民グループ、下北沢再開発反対を訴える市民団体、宮下公園が「ナイキ宮下パーク」に反対するグループがブースを出展しており、会場内はかなり賑わっていた。
私がこのイベントに足を運ぶのは6年ぶりである。そのときは反戦・経済のグローバル化についてのシンポが多数開かれており、私が会場に行ったのは、それらのシンポが目当てだった。内容は充実していたが、そのシンポを聴いていた人はさほど多くなかったこと、パネラー(女性です)の一人が、私を指さしてやたらとはしゃいでいたことは、今も記憶に残っている。あの時もお客さんは結構多くて、ブーステントも多く出ていたけど、その当時は環境系団体がメインで、国際交流団体はさほど多くなかったと記憶している。
公共サービスの危機
シンポジウム「民主主義の貧困~渋谷区はどこに行くのか?」の最終回。
この回では、労働・ジェンダー問題を担当している竹信三恵子・朝日新聞編集委員の講演を掲載する。彼女からは、公務員業務の民間委託が抱える問題について、鋭い指摘がなされた。
私は労働担当だが、社内の組織改編で、労働グループが経済グループに吸収された。
この問題に興味を持ったのは、公務労働の問題を扱ったからだ。仕事が増えているのに定数は増やせない、税金が足りないから公務員の数が少ないという自治体が増えていて、そこではパート社員が増えている。官製ワーキングプアというのは私が作った。この問題については私も本当は書きたいが、同僚が書いているので勝手に書けない。
杉並区で公務員の委託があった。お金がないからパートを雇っが、3年で契約切れになる。仕事に習熟した時に期限切れになる。取材先でその話をしたら人事権を握っている人が怒り出した。本当はプロが関わるのだが、それは面倒くさいので安い職員で済ませようという動きが出た。委託してしまえば委託先に全部押しつけられるのが流行っている理由だ。
民間委託が広がったのは、国からの地方交付金が少なくなったからだ。景気が悪いから税収が減る。非正規化、委託化が進み、清掃業務も委託になっている。
1999年にPFI方法という法律が制定された。運営リスクを民間にかぶせて、行政のリスクを減らせる点が本来のメリットのはずだが、日本ではあらゆる自己の責任が民間に移転されていないケースが多い。最低賃金意外に規制がなく、民間業者はリスクは行政、コストは労働者にかぶせる場合が多く、利益は民間、リスクは行政、コスト働き手と言った運営の仕方が問題になりがちだ。
仙台では委託会社が破産した。競争入札で経営が成り立たなくなり、1,000人の職員が失業して問題になった。儲からないけど役所の仕事を付き合えばいいと思って仕事をしていたが、結果的に倒産してしまった。役所がコスト減を図るために、民間に委託しているだけという事例も多い。
twitterへの反撃
昨年秋、「週刊ダイヤモンド」が大規模なtwitter特集を掲載したのがきっかけで、店頭に並んでいる週刊誌もこぞってtwitter関連の記事を掲載している。それらの多くはtwitterを褒めそやし、ヘビーユーザーを自認する私ですら「おいおい、いくら何でもそれは褒めすぎでしょ?」と言いたくなる。先鞭を切った「週刊ダイヤモンド」は、週刊誌にもかかわらず増版出来を重ね、未だに一部大書店では、同誌のtwitter特集掲載号が店頭に並んでいる。同誌では表紙・特集記事のトップページに利用者のアイコンを掲載しているが、この雑誌を買ったアイコン提供者はどのくらいいるのだろう?
これだけ各誌が「twitter万歳!」的な特集を組んでいると、どこかがtwitterに批判的な記事を組むのではないかと思っていたのだが、案の定というべきか、4/12日発売の「週刊ポスト」(小学館)が「twitterを疑え!」という特集を組んできた。小学館は極右隔週誌「SAPIO」で、twitterを批判するコラムを掲載していたが、今回はWEB関係者ら4人に、twitterについて語らせている。彼ら4人に共通しているのは、twitterの存在意義を認めつつも、一部ユーザー間で広まっている「twitterで世界は変わる」という見方には明確に異議を唱えている、ということである。
まず最初に出てくるのは、「WEBはバカと暇人のもの」の著者・中川淳一郎氏(WEBデザイナー)である。彼は前述の「SAPIO」に寄稿し、そのなかでtwitterを「うんこなう」「かれーなう」に代表される「暇人による暇つぶし駄文の垂れ流し」と表現し、多忙なビジネスマンが、首っ引きで書き込む余裕なんかない、ネットの前に張り付いているのは間違いなく暇人であると決めつけている。
中川氏は名前こそ出さないものの、勝間勝代・神田敏昌・津田大介・広瀬香美の各氏らを「ツイッター・エバンジェリスト(伝導師)」と命名する。中川氏は、彼ら「twitter伝導師」達に、辛らつな言葉を浴びせかける。曰く、彼らは口々に「twitterには可能性がある」いいつつ、彼らの著作物の内容は似たようなことばかり書くだの、曰くオバマ・米国大統領が、twitterにおけるコメントは、オバマ陣営のスタッフの書き込みだったと言うことには誰にも触れていないではないかと、だの。彼ら「伝導師」をかばうわけではないが、彼らが書いているのはtwitterの「入門書・解説書」であり、書かれる内容が似通ってくるのは仕方がない。しかし、中川氏はそのことに触れず、一方的にけなすのみである。
また中川氏は、ネットほど知名度や才能が露骨に出る世界はない、一般人はいくらなにを書いても「一般人」のまま、知名度が上がることはあり得ないから、つぶやけば友達が増えるわけではないという。その例として、彼は多数のフォロワーを獲得しているのは、現実世界でも名前が売れている有名人でないと、twitterの恩恵を受けられないと主張する。あげく、有名人でなくてもtwitterを有効活用できるのは、せいぜい風俗嬢じゃないかと言い出す始末である。
だが、ネットやtwitterというのは、彼が言うほど「バカと暇人のもの」なのだろうか?
有識者の危機感@宮下公園
シンポジウム「宮下公園~TOKYO SHIBUYA」の第5回目。
今回は植松青児氏(みんなの宮下公園を守る会)、稲垣永史氏(プロスケーター)、ピーター・バラカン(ブロードキャスター)各氏の話を掲載する。
植松氏
2日前(3月24日)に、本来なら工事主体のナイキによる説明会があるはずだったが、ナイキの社員は、説明会場に姿を見せず、渋谷区の公園化と東急建設の人間だけがやってきた。この件について東京新聞が記事を書いたが、ナイキと渋谷区のトリックに欺されている内容の記事で落胆した。
結論から言えば、この計画はストップとリセットにつきる。この計画は進んでいるので止めなければならない。この計画には正当性がないと思っているので、ゼロから考えたい。
最初は、プロセスの問題がある。普通は区議会による予算承認があるが、民間のカネを使うからその必要はないといっている。宮下公園は人口の公園だ。それが古いから整備しようという話は結構だが、マスタープランを出して同意しないと話にならないはずだ。そのあと公募→コンペ→整備という流れになるはずだがが、たたき台になるマスタープランが出ておらず、公募もない。実際は、企業のいうまま選定をしている。本来はコンペなしで計画を進めるはずだったが、2社出てきたのでコンペをやってナイキを選んだ。本来なら他の会社に声をかけるのが筋だが、他社には声をかけていない。 2つめ。改修という名の言葉はまやかしだ。緑地公園を改修するとなぜスポーツパークになるのか?改修されたら緑の公園になるはずだが、なぜかスポーツパークになっている。渋谷区は緑の公園を捨てた。別の機能の公園にしてしまおうというのが渋谷区の計画だ。スケボー等の新設するのは「区民の要望だ」といっている。
問題3.本当に区民の要望を集めているのか?ドックランとか緑地公園というニーズもあるのに、スケボーだけ選んでしまった。その要望は区だけで決めていいのか?そのプロセスがあったら納得するが、実際は違う。一昨日突っ込んだら、今の公園はいい状態じゃないだろ?と言う答え。これは答えになっていない。公園設計の問題を運用・利用状況の問題にすり替えている。
決定方法は「コンペ」の形をとっているが、ナイキに決めたのはコンペではない。区がやろうとしていることは「改修」といいながら、別の公園に造りかえようとしている。大事なことは、開かれた議論で決めるべきだ。区のやり方は、お金のある人のいうとおりのやり方である。リセットしたら、恣意的に排除されている人の要望を派除しないことだ。
区はホームレスを不法滞在者と切って捨てたが、彼らはあるプロセスを経て講演に住み着いている。それはハウジングプアだ。彼らの多くは派遣切りにあい、ここに住んでいる。区は彼らに対してきちんと対策をしていないし、単に不法滞在者として切り捨てるのではなく、ちゃんと聞き入れなければいけない。31日には緊急デモをやる。
お粗末な渋谷区の現状
シンポジウム「宮下公園~TOKYO SHIBUYA」の第4回目。
今回は、映像放映に引き続いて行われたディスカッションの様子を送る前に、前回のシンポジウムでパネラーとして発言し、今回たまたま観客席にいた渋谷区オンブズマンの堀切氏の発言を先に紹介したい。彼は、今の渋谷区の置かれた現状をあますところなく紹介してくれた。この話を下敷きにした上で、パネラー達の話を見た方が理解が深まると判断したからである。
堀切氏
この問題については、ほとんどの渋谷区住民は関心がない。地形の問題もあるが、渋谷区は外来者がほとんどで、住民はかなりすくない。北部の住民は新宿に近いので、新宿に買い物に行く。外来者が渋谷に買い物に行く。渋谷区の人口は19万人ほどだが、人口の2/3は北部(代々木、初台、幡ヶ谷など)に、1/3が南部に住んでいる。そういう地形なので、行政側には都合がいい。部長級の人で渋谷区在住の住民ほとんどいないから、この問題は彼らにとってはどうでもいい話だと思っている。自治体としての体をなしてない。
ストップ&リセットは絶対できると思う。オンブズマンはPTAで活動していた人が中心で、行政の揚げ足をとる期間ではない。我々が本気で活動した活動は成功しているから、本気で活動したら止められる。なぜなら、来年は区長選と区議会選挙があるだからだ。
今年の人事異動で、部長級で過去に問題を起こした人は、当たり障りのないところに移動になった。おそらく、来年選挙が終わったら元に戻る。環境アセスメントをしないのは渋谷区の専売特許だ。身近な問題を取り上げないのは、自分達が住んでいないからだ。区長自身からしても横浜に住んでいる。区長の自宅は高台にの高級住宅街で、目の前が公園だ。自分自身が出稼ぎだから関係ない。ああかわいそうだなと思っていてもそれで終わり。自分が止めても関係ない話だと思っている。
区長は「渋谷区の財政は厳しい」といっているが、実は渋谷区はお金持ちだ。お金がない自治体のまねをしただけだ。民間委託の件についても、これはいいことだと他のまねをしている。宮下公園をネーミングライツでナイキに委託する一方で、404億円かけて区の設備を立て替える。区長のトップダウンとノリで全てを決めてしまうのだ。決定事項に、法的な根拠がないまま決めてしまうことが多い。だからいざ裁判となった時、裁判所から聞かれても答えられない事が多い。それを防ぐには、区長と議員を変えるしかないから、絶対に今度の選挙に行って欲しい。